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黒枝豆の新品種「ひかり姫」本格栽培へ 人気の「丹波黒」元に兵庫県が開発、茶色い斑点も少なく

2022.06.06
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栽培講習会で、省力化に向けた機械での種まき作業を見学する生産者ら=1日、加西市別府町、兵庫県立農林水産技術総合センター

栽培講習会で、省力化に向けた機械での種まき作業を見学する生産者ら=1日、加西市別府町、兵庫県立農林水産技術総合センター

パック入りのゆでた「ひかり姫」。莢には茶色いシミが見られない(兵庫県提供)

パック入りのゆでた「ひかり姫」。莢には茶色いシミが見られない(兵庫県提供)

 兵庫県が開発し、試作されてきた黒大豆枝豆「ひかり姫」が2022年度、本格栽培に移る。収益性が高く、新型コロナウイルス禍を受けた主食用米や酒米「山田錦」の代替作物として、県内各地で育てられてきた。首都圏のスーパーに売り込む計画もあり、JAや生産者は、さらなる生産、販路拡大を視野に「地域を盛り上げたい」と意気込んでいる。(森 信弘)

 ひかり姫は、県立農林水産技術総合センター(同県加西市)が、豆、枝豆ともに人気の「丹波黒」を元に開発。丹波黒と遺伝子レベルで94%が一致し、濃厚な味と粒の大きさはほぼ同じ。一方、病害に強く、丹波黒にみられる莢にできる茶色い斑点が極めて少ないのが特長だ。

 試作は16年度、養父市の3アールから始まった。病害への強さとともに、コロナ禍での日本酒消費低迷に伴う山田錦の需要減や、価格が下落する主食用米の代替として、生産者とともに栽培面積は増えてきた。

 21年度は、播磨や阪神間、但馬、淡路の県内19市町の計5・5ヘクタールで栽培され、県内の直売所やスーパーで販売。22年度は、洲本市と多可町も加わり、21市町の計約8ヘクタールで生産される見込みだ。

 同センターは、一般生産に向けた試作として、センターが種子を作り、希望者に無償で配ってきた。6年間の栽培データを分析し、県内各地で生産できることを確認。本格栽培に移行できると判断した。本年度からの種子生産は、種苗会社「山陽種苗」(姫路市)に任せ、JAや農業法人を通じて県内の生産者に限り販売される。

 ひかり姫は一つの莢に2粒の豆ができる割合が高く、人件費を除いた利益は10アール当たりの試算で77万円(21年度)と山田錦の10倍近くになる。6月中旬ごろに植え付け、収穫は9月下旬~10月中旬。コメに比べ、莢のもぎ取りなど収穫、出荷作業に時間がかかるため、同センターは機械化で省力化する方法を広めてきた。

 JA兵庫みらい(加西市)は、山田錦に代わる作物として生産を奨励。21年度には管内の加西、小野、三木市で県全体の約4割、約1・9ヘクタールで栽培された。同JAは、神果神戸青果(神戸市兵庫区)を通じ、県内のダイエー各店で販売。22年度は約3・2ヘクタールに広がる見込みで、首都圏の店舗での試験販売も計画する。

 ひかり姫の出荷スタートは、丹波黒より1週間ほど早く、関西で人気の丹波黒の需要先取りを狙う。一方、関東では緑色の枝豆が一般的で、黒い色や莢にできるシミへの抵抗感もあって、認知度はまだまだという。担当者は「食べてもらえれば、おいしさは分かってもらえる。莢の美しさとともに、丹波黒と合わせた黒枝豆の知名度向上につなげたい」と話している。