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増える企業版ふるさと納税、兵庫でも 自治体は「営業」強化

2022.07.02
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企業版ふるさと納税の寄付金を本の購入費用などに充て3月にオープンした「こども本の森 神戸」=神戸市中央区加納町6

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神戸新聞NEXT

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 企業版ふるさと納税制度を使った自治体への寄付が増えている。神戸新聞社の取材では、制度を活用する兵庫県と県内41市町への2021年度の寄付総額は3億1833万円、延べ154社に上り、20年度の2倍超となった。企業の税額控除の割合が最大6割から同9割になるなどの制度改正で企業側の負担が軽くなったことが主な要因とみられる。16~21年度累計では約6億4千万円となり、貴重な財源を確保するために、自治体側が企業への「営業活動」を強める動きも目立つ。(高見雄樹)

 自治体は、寄付を受ける対象プロジェクトなどを盛り込んだ「地域再生計画」を作成し、内閣府の認定を受けると利用できる。兵庫県内では35市町と県が受け入れ態勢を整えている。

▼トップは加西

 住民1人当たりの寄付額(累計)が1558円で県内トップの加西市。市内を走る北条鉄道の運行本数を増やすため、列車が離合できる設備を法華口駅に新設した際、費用の一部を調達した。18、19年度に21社から計6410万円を集めた。

 成功の要因は、前副市長の佐伯武彦氏のトップセールス。元川崎重工業副社長で、同市は「佐伯氏の人脈や経験が大きい」とする。佐伯氏は現在、高砂市の政策アドバイザーを務める。同市の担当者は「加西の取り組みや企業へのアプローチを勉強中」とし、22年度に初の寄付を獲得した。

 たつの市と西脇市は、市長がトップセールスに取り組む。寄付企業の数(累計)は、たつのが117社で県内トップ、西脇が28社で3位。両市とも継続して寄付する企業が多く、毎年の寄付額も安定している。

 寄付額が累計2億4485万円で、県内最多の神戸市。最大の戦略は、寄付が何に使われるのかを明示することだ。市参画推進課の担当者は「企業側の優遇措置拡大を機に、使い道を明示するなど力を入れた」とし、「市のウェブサイトを見た企業の問い合わせが多い」と説明する。

 同課によると、3月にオープンした図書館「こども本の森 神戸」のほか、青少年科学館の再生や神戸マラソンの開催支援など、複数の使い道を示した成果もあり、21年度だけで約1億8千万円を集めた。

 他の自治体も知恵を絞る。寄付金で武庫川沿いの桜並木保存プロジェクトを始めた三田市は寄付企業探しを民間に依頼。22年度予算に専門業者への業務委託費66万円を計上した。市川町や上郡町は「地元の工業団地に工場を持つ企業に呼び掛ける」と狙いを定める。

▼尻込む市町も

 寄付の受け入れに慎重な自治体も。「企業がどこまで乗ってくれるか分からない」と赤穂市の担当者。相生市も「費用対効果を考えると厳しい」とする。県内では両市など6市町に制度がなかった。ただ、22年度中に小野市が開始、芦屋市も検討を始めるとした。

 猪名川町は一時導入したが、「マンパワー不足で手が回らない」と受け付けをやめた。個人向けでカニの返礼品が人気の香美町は、制度はあるが「まずは個人向けに力を注ぐ」とする。

 20年に始めた後発組の三木市は2年間で2件、110万円にとどまる。「金額だけを見ると厳しい」と打ち明ける市縁結び課の成瀬拓生課長(52)だが、表情は明るい。寄付には結び付かなかったが、スポーツ用品大手アシックス(神戸市中央区)とデジタル関連の実証実験を始め、飲料大手サントリーホールディングス(東京)とは人材交流が実現。「今後の自治体経営に民間との連携は必須。企業版ふるさと納税は、その入り口です」と話す。

     ◇     ◇

■寄付、兵庫は関西2位 20年度

 企業版ふるさと納税は全国的にも増えている。内閣府地方創生推進事務局によると、2020年度には2249件、約110億円の寄付があった。前年度に比べて件数で1・7倍、金額では3・3倍に伸びた。

 金額で都道府県別1位は北海道(15・8億円)で、青森県(10・8億円)、静岡県(9・5億円)が続く。関西では兵庫県(1・5億円)が京都府(2・6億円)に次ぐ2位だった。

 企業と自治体をつなぐ「マッチングイベント」も増加。21年度は国の主催で年8回開いたほか、奈良県のイベントには同県内の25自治体と企業28社が参加した。北海道や熊本県では地方新聞社が開いた例もあった。

 企業版ふるさと納税に詳しい官民連携事業研究所(大阪府四條畷市)の昼田浩一郎取締役(34)は「制度が広く知られておらず、伸びる余地は十分にあるが、金額だけに注目すべきではない」と訴える。企業にはESG(環境・社会・企業統治)への関与がより求められるからだ。

 昼田氏は「自治体から募ったプロジェクトに寄付金を分配するなど、企業が主体的に動く事例が増えてくる」とみる。その上で、税理士や銀行員に制度を理解してもらい「会社の価値を高める手段として経営者に助言してほしい」と話す。

 一方、自治体には「小さな取り組みであっても、ためらわずに成果を発信していくことが重要」と、連携の輪が地域社会に広がることを期待する。(高見雄樹)

【自治体別詳細データ】

企業版ふるさと納税による寄付金一覧

企業版ふるさと納税による寄付件数