経済
山田錦の知識蓄え、日本酒の魅力発信へ 新入社員が酒造り研修 ワールド・ワン
新型コロナウイルス禍で日本酒の消費が低迷する中、居酒屋チェーン、ワールド・ワン(神戸市中央区)の新入社員12人が日本酒の造り方を学んでいる。酒米「山田錦」の特長などについて講義を受け、田植えも体験。1年かけてさまざまな知識を取得し、日本酒の魅力を来店客に伝えていく。(森 信弘)
同社が2021年度から始めた「山田錦で乾杯プロジェクト」。全国農業協同組合連合会兵庫県本部(JA全農兵庫、神戸市中央区)などと組んで、新入社員に日本酒について深く学んでもらうことで、飲食業界の活性化や日本酒消費の拡大につなげる狙いだ。
兵庫県は、酒米の全国最大の産地で、出荷量は国内の4分の1を占める。しかし、新型コロナ禍で日本酒消費が低迷し、酒米の需要は減少。県内の21年産山田錦の作付面積も4027ヘクタール(兵庫県調べ)で、前年から約2割減った。
研修は、4月からの約1年間に計8回実施。本年度の新入社員は、これまでに県や同JAの講師から山田錦の歴史や、生産、流通について学んだ。加東市で山田錦の田植えも行い、田植え機にスタッフと同乗したり、手作業で1列に並んだりして苗を植えた。
今後は稲刈りのほか、県内の酒蔵で酒造りの見学や利き酒をし、作業の一部を体験する。来年3月に研修を終えると、「山田錦」のマイスターとして接客時に使える缶バッジが授与される。同4月には、新入社員が研修で考えたメニューを「日本酒フェア」として店舗で提供する企画も予定している。
神戸・三宮の店舗で働く清水峻平さん(23)は「講義を受けて田植えをすると作業の意味がよく分かる」と話した。また、別の店舗に勤めている中田萌子さん(22)は「ネットで知るのと体験するのとでは、店で説明する時の気持ちが全然違う」と笑顔を見せた。
同社は神戸市内をはじめ大阪、東京などで居酒屋約20店を展開する。松波知宏取締役(36)は「酒どころ神戸の企業として、山田錦の基本知識を提供できるようになってほしい。他の食材についても、知ろうとするきっかけになれば」と期待する。