ひょうご経済プラスTOP 経済 「炭素繊維強化プラ」再利用化に成功 航空機など部材 新明和、新興企業と連携し試作

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「炭素繊維強化プラ」再利用化に成功 航空機など部材 新明和、新興企業と連携し試作

2022.07.29
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CFRPが使われているボーイング787の主翼向け部材(新明和工業提供)

CFRPが使われているボーイング787の主翼向け部材(新明和工業提供)

新明和工業が試作した下水処理場用のプロペラ。黒い部分にリサイクルしたCFRPが採用されている(新明和工業提供)

新明和工業が試作した下水処理場用のプロペラ。黒い部分にリサイクルしたCFRPが採用されている(新明和工業提供)

リサイクルしたCFRPから回収した炭素繊維(右)と新品の炭素繊維。形状だけでなく強度もほぼ変わらないという=宝塚市新明和町

リサイクルしたCFRPから回収した炭素繊維(右)と新品の炭素繊維。形状だけでなく強度もほぼ変わらないという=宝塚市新明和町

 新明和工業(兵庫県宝塚市)は、航空機の部材などに使われる炭素繊維強化プラスチック(CFRP)から炭素繊維を取り出して、別の部品に再利用することに成功した。リサイクルを手がけるスタートアップ(新興企業)、富士加飾(ふじかしょく)(小野市)の技術を活用。新明和によると、世界で初めて新品同様の品質を確保できたという。二酸化炭素(CO2)や廃棄物の削減にも寄与するといい、航空機の内装部品や下水処理場のプロペラなどとして、2025年以降の製品化を目指す。(大島光貴)

 CFRPは炭素繊維に樹脂を混ぜた材料で、軽くて強いのが特長。航空機の部材などに使われ、電動化が進む自動車や洋上風力発電の風車向けにも需要拡大が見込まれている。

 ただ、リサイクルが難しく、従来の方法では回収した炭素繊維が短く切れたり綿状に絡み合ったりして強度が落ちる課題があった。

 新明和は、米ボーイングの中型機787の主翼を支える部材などにCFRPを使用。新型コロナウイルス禍前の2019年度に約100トンの廃材が発生し、全て埋め立てて廃棄していた。

 共同研究は20年、富士加飾が新明和に声をかけて始まった。約1年かけて廃材から取り出した炭素繊維を材料の一部に使い、今月中旬、下水浄化タンクで下水と微生物をかき混ぜるプロペラ(直径2・5メートル)を試作した。

 CO2削減効果があることも実証できた。CFRPを1キロ製造すると15~20キロ程度のCO2が排出されるが、熱風を循環させて樹脂を取り除く富士加飾のリサイクル法では5分の1以下の2・65キロまで減るという。

 新明和は富士加飾との連携をさらに強化して、リサイクル品の質や量を安定させ、将来的には自社で製造する航空機の部材に再利用したい考え。航空機事業部の担当者は「最終的には引退した航空機のリサイクルを目指す」と話す。