経済
「イチゴは年中おいしい」NTT西子会社が通年販売 栽培はビルの空室、1000円超の大粒も
NTT西日本グループのNTTビジネスソリューションズ(大阪市)が、兵庫県宝塚市にあるNTT西所有のビルの空室を植物工場に転用し、イチゴ栽培の事業検証に取り組んでいる。農家のノウハウをデータ化して活用するなど情報通信技術(ICT)で生育環境を制御。「夏でも旬」とイチゴを通年販売している。今後、工場設備と栽培法、販路をセットにして、参入を狙う企業に売り込むことを検討している。2027年度には50億円規模の事業に育てたい考えだ。
農業は、同グループが新ビジネスとして注力する10領域の一つ。省力化でき、環境負荷も低い植物工場に着目した。作物としてイチゴを選んだのは、販売単価が高く、先行する植物工場で事例が少ないから。18年から大阪市内で試験栽培を重ね、昨年夏から本格栽培を始めた。同グループが販売する初の農産物となる。
宝塚市のビルは4階建てで、延べ床面積約2900平方メートル。かつて窓口業務の事務所だった1階の約200平方メートルを使い、昨年7月から「ゆめのか」約1万株を栽培している。イチゴ産地の高知県佐川町と協定を結び、農家の助言を得て、気温の変化や水やりの量などをデータ化して自動制御。閉鎖空間であることや益虫の活用で、農薬の低減も実現できたという。
昨年8月から「N.BERRY」のブランド名で、通年販売を始めた。1パック(約250グラム)2700円程度で、35グラム以上の大粒を1粒1300円ほどで販売。都市部の商業施設、食品スーパーのいかりスーパーマーケット(兵庫県尼崎市)の一部店舗などで取り扱っている。佐川町のふるさと納税返礼品(今年は8月末まで)にも採用された。
現在の課題は、知名度をどう広めるか。イチゴ事業責任者の宇波晶子さん(45)は「イチゴといえば冬、という印象が根強いが、年中おいしいと消費者に覚えてもらいたい」と話す。自社で収益性を検証した上で23年度中にも、設備やデータ、開拓済みの販路をパッケージにして関心のある企業に販売していきたいという。(広岡磨璃)