経済
新しい旅のカタチ「おてつたび」に集う若者たち 農家に宿泊して収穫体験、お給料も出るらしい
兵庫県丹波篠山市の農業法人「アグリストリート」が、インターネットサイトで募った都市部の若者らに宿泊先を提供し、数日から1カ月間、農作業を手伝ってもらう取り組みを始めた。人手を確保しつつ、若者らの「半農半旅」の希望をかなえ、新たな交流の場を生み出している。(森 信弘)
■丹波で枝豆収穫、京都や大阪観光へ
サイトは、人手不足の農業や宿泊業などと、旅行者とをつなぐ「おてつたび」。同名の東京のベンチャー企業が運営する。受け入れ側は宿泊先を準備し、短期アルバイトとして若者らを雇用。利用者は働きながら滞在を楽しみ、周辺を旅することもできる。
7月上旬、市内の同法人の畑で、サイトを使って訪れた首都圏の大学生3人が、地域の新たな特産白大豆枝豆「デカンショ豆」の収穫に汗を流した。「和気あいあいで、すごく楽しい」と早稲田大3年の大芦さくらさん(21)=栃木県。立教大4年の石井日奈子さん(22)=東京都=は「地域の人と交流できて満足。京都や大阪を観光して帰りたい」と笑みを浮かべた。
同法人は市内の農地約10ヘクタールで、地元特産の丹波黒の枝豆やデカンショ豆、山の芋などを栽培し、加工品も手がける。スタッフは3人いるが、夏から秋は収穫などのため、アルバイトを雇用してきた。
■農家にもメリット
同法人社長の大坂宇津実さん(29)は神戸大時代、農業サークルで市内の農業を手伝った経験から5年前、丹波篠山に移住して就農。繁忙期は、知人を介してアルバイトを見つけてきた。
だが、同サイトを知り、簡単に人を集められる上、「ワイワイ楽しめる農業にしたい」と始めた当時のイメージを実現できると、受け入れ先として登録。今年5月から、主に2泊3日で、1回に2~3人ずつ、20代を中心に約20人を受け入れてきた。
宿泊先には、従業員寮として使う古民家を無償提供。利用者らの作業時間は1日数時間で、昼食として収穫物を調理したり、バーベキューを楽しんだりしてきた。今後、丹波黒大豆の枝豆の収穫で忙しい10月には、15人が2週間から1カ月間滞在する予定という。
おてつたびによると、同サイトを使う県内農業者は、アグリストリートのほか、淡路島の農業法人が9月に利用予定という。おてつたびの広報担当園田稚彩さん(27)は「農業は担い手不足が課題だが、興味がある人の最初の一歩にもなれれば、うれしい」と話している。