経済
鉄道開業150年 JR西日本・長谷川一明社長に聞く 鉄道の「過去」「現在地」そして「未来」
日本で鉄道が開業し、14日で150年を迎えた。全国に張り巡らされ、産業の発展を支えてきた路線網は今、人口減少と新型コロナウイルス禍の社会変容で、歴史的な岐路に立つ。関西における鉄道の意義と赤字ローカル線問題、将来像とは。JR西日本(大阪市)の長谷川一明社長が14日、神戸新聞社のインタビューに答えた。
-関西では、新橋-横浜間の開業から2年遅れで神戸-大阪間が開業した。
「計画自体は新橋-横浜間と同じ頃からなされている。このエリアが日本の経済社会においていかに重要だったかということが分かる。殖産興業のため東は横浜、西は神戸と港のある地域が選ばれており、鉄道網はこうして首都圏、関西圏を中心に全国に発達し、日本の近代化をリードした」
-戦争や高度経済成長…。鉄道は社会情勢と相互に作用してきた。
「革命的だったのはやはり新幹線の登場だろう。とりわけ兵庫には駅が四つもあり、喜んでいただけたのではないか。しかしモータリゼーションの発達で、鉄道だけが近代的な輸送手段ではなくなってしまった。そんな中、新型コロナウイルス禍に見舞われた」
-コロナ禍のインパクトはどれくらい大きかった。
「『2020年の次は2021年だと思っていたら2030年だった』ぐらいの衝撃だ。もともと少子高齢化の局面に入っており、鉄道がこれまでの拡大路線を見直さねばならないタイミングは遠からず訪れていた。しかしそのタイミングはコロナによって早まった。社会行動が変容し、人が移動せずに経済・社会活動を行う時代に入った。10年分の変化ともいえ、鉄道は新たな時代を迎えた」
-赤字ローカル線問題も一気に表面化した。
「西日本は私鉄を含めて鉄道網が発達したエリアだ。その分、過疎化の影響も大きい。沿線自治体、住民の皆さまとともに、最適な地域交通の在り方を考えていかねばならないが、兵庫の場合は、県が市町などと共に協議会をつくり、一緒に検討していただける動きが進んでおり、ありがたい」
-うめきた新駅の開業、リニア中央新幹線と北陸新幹線の大阪延伸で関西はどう変わるか。
「これまで以上に海外とのつながりが強くなるだろう。ビジネスだけではなく、観光、社会、文化も含めて、だ。今後は神戸空港の国際化もあり、関西のポテンシャルは高い。首都圏と並び、日本のハブになる」
-鉄道の50年後、100年後は。
「また別の輸送機関が出てきているかもしれない。鉄道の果たせる役割が限定されてくる可能性もある。都市もこれからコンパクトシティー化が進む。地方の中核都市間を結ぶような鉄道が重要になってくるのではないか。都市の発展と鉄道とがよりうまくかみ合ってまちづくりに貢献できるようにしていきたい」
-目指す姿は。
「高速性、技術的な高みは常に追求されるだろうが、それよりも、時間をより有意義に、快適に過ごせる輸送モードになることが重要だろう。これからはゆとりの時代だ。満員電車で押し合いへし合い…はいけない。物理的なことだけでなく、デジタル面も含めてよりシームレスに鉄道を利用していただけるようサービス向上に努める。何より、鉄道は安全でなければならない。私たちは、福知山線列車事故(尼崎JR脱線事故)という極めて重大な事故を起こした。将来にわたり、安全性を高める努力を不断に続けていく」
(西井由比子)
【はせがわ・かずあき】1981年東大法学部卒、国鉄入社。民営化後のJR西日本では神戸支社次長、岡山支社長などを経て2012年近畿統括本部長、16年副社長創造本部長、19年から現職。好きな言葉は「相互理解」「敬意と共感」、好きな路線は「赤穂線」「伯備線」。津市出身。



















