経済
「神戸ビーフ」輸出量が過去最多に 21年度、前年度比1・65倍
兵庫県産高級牛肉「神戸ビーフ」の輸出量が2021年度、前年度比1・65倍の73トンと過去最高を記録したことが県などのまとめで分かった。これまでは30~40トン台で推移していたのが、一気に跳ね上がった。何が起きているのか取材した。(森 信弘)
■「下落して値ごろ感」
神戸ビーフは1キロ当たりの枝肉相場価格(税別)が18年度、20年開催予定だった東京五輪のインバウンド(訪日客)需要を見越し、平均4182円まで上昇。だがあまりの高騰で消費が鈍化し価格が下がり始めた。県によると、海外でも価格高騰によって、ほかの和牛に客が流れる面があったという。
そこへ同五輪の延期や新型コロナウイルス禍によるインバウンドの減少、外食制限などで消費は急速に冷え込み、20年度の同価格は2979円に下がった。21年度も3151円にとどまっており、県畜産課の担当者は「下落して値ごろ感が生まれ、需要が増えた」と指摘。コロナ禍からの世界的な経済回復も輸出を後押しした。
輸出量の地域別最多は欧州連合(EU)を中心とした欧州の22・8トンで前年度比2・4倍に増えた。次いで米国・カナダの北米が14・7トン。香港、台湾のそれぞれ8・4トンが続く。前年度から最も伸びたのはアラブ首長国連邦(UAE)で、3・3倍の4・9トン。同国のドバイで21年10月~今年3月に開かれた万博の影響とみられる。
■米国のユーチューバーにも
好調を支えるのは、海外での流通体制の構築だ。輸出は12年2月のマカオ向けから始まり、アジアや欧米など23カ国・地域に広がる。ブランド管理の制度に基づく、レストランや精肉店の指定登録店も海外37カ国・地域に368店(22年7月時点)。国内と合わせた全784店のほぼ半数を占めるまでに拡大した。
さらに21年度は、牛肉に加工する和牛マスター食肉センター(姫路市)や生産者、流通業者らが神戸ビーフの輸出を促進する共同事業体を発足させた。
米国やEUが輸入の要件とする「アニマルウェルフェア」(動物福祉)に配慮した飼育に取り組む。全日本空輸と連携し、日本-米国便ビジネスクラスの機内食に神戸ビーフの柳川煮を提供。米国のユーチューバーを使った情報発信も行ってきた。
■海外バイヤーを招待
コロナ禍が落ち着きを見せる中、22年度は海外でのプロモーションに力を入れる。11月からは欧米で、行政や料理店、メディアの関係者を対象に試食会を開く。来年3月には、海外のバイヤーを同食肉センターに招いた競りの開催も計画する。
輸出は22年度も好調が続く。神戸ビーフのブランド管理を担う神戸肉流通推進協議会の谷元哲則事務局長(61)は「効果的なPRを行うため各国の卸業者とも協力し、さらに神戸ビーフを広めたい」と意気込んでいる。