経済
神戸阪急、「そごう」から屋号替え3年 20年ぶり改装、好スタート 購入制限の店舗も、売上高は28%増
神戸・三宮の神戸阪急が、そごう神戸店から2019年に屋号を変更して、今月で丸3年を迎えた。当時、地下1階の食品フロアを改装して買い物客の呼び込みに成功したが、その直後に新型コロナウイルス禍が拡大。緊急事態宣言の発令やまん延防止措置の適用のたびに営業縮小に追い込まれてきた。コロナ禍が落ち着きをみせる今年、ようやく全館改装に着手。ファッションや美容系売り場の強化に加え、23年には神戸らしいライフスタイルを提案する「生活提案型」の売り場づくりに乗り出す。(広岡磨璃)
■コロナ禍乗り越え
今月5日、神戸阪急の新館5~6階に開いた無印良品は、人気商品に購入制限をかけるほどにぎわっていた。屋号変更からちょうど3年となったこの日。神戸阪急が進める約20年ぶりの大規模改装の一環として、オープンした。
今から5年前の17年10月、同店は、経営主体が、セブン&アイ・ホールディングスから、エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングに移った。その際、H2Oは、阪急の名称を使わず、そごう神戸店として営業を継続。そごう出身の店長にも残ってもらい、売り上げを保持しながら改装の方向性を探った。
2年後、神戸阪急に屋号を変更。これに合わせ、阪急の強みである食品売り場を改装した。その効果が表れ始め、次は地上階に着手しようか-というときに、コロナ禍に見舞われた。
■ライバル店との競合
そごう時代の1990年、同店は売上高1471億円を誇った。しかし、ここをピークに減少へ傾く。17年2月期は450億円。H2O傘下となった18、19年も400億円前後。20、21年はコロナ禍の影響で300億円を割り込んだ。
一方、ライバルの地域1番店、大丸神戸店(神戸市中央区)はコロナ禍からいち早く回復。22年度の売上高は5年ぶりに800億円台に乗る勢いだ。富裕層をしっかりと握り、高額商材の仲介や、旧居留地の高級ブランド集積に力を入れる。中価格帯の靴やアクセサリー売り場も8~9月に改装。売り場にさらに厚みを持たせた。
大丸神戸店の今津貴博店長は、大規模改装を進める神戸阪急の動きに、「基本的には神戸という商圏の中でパイの奪い合いになる」と警戒感を強める。一方、神戸阪急を運営する阪急阪神百貨店の山口俊比古社長は「お客さまをよそからはがしてくる、という風には意識していない」と強調。ブランド誘致の綱引きも含め、つばぜり合いを繰り広げる。
■対大阪も意識を
神戸阪急は今年3月に改装に着手。23年中に完了する予定で、今年8月末には、美容系とモード系ファッションの売り場がオープンした。
美容系は、本館2~4階の計約1700平方メートルに45ブランドを展開。タブレット端末で自分に合う色味を試せるバーチャルメークや、2人一組で受けられる個室マッサージなど体験や施術サービスを充実させた。
モード系は、新館1~3階の約2500平方メートルに33ブランドが並ぶ。服飾関連雑貨の比率を高め、食やインテリアも組み合わせて幅広い客層に対応。有名ブランド「クロエ」が手がけるアイスクリーム店、同じく「トム ブラウン」のバー併設店は世界初登場だ。
改装の効果もあり、同店の9月の売上高は前年同月を28%上回った。杉崎聡店長は「幅広い客層に来ていただいている」と手応えを語り、改装後の24年度の売上高について「まずはコロナ禍前の400億円」を目標に掲げた。500億円も射程に入れる。
神戸・三宮周辺は三宮再整備が進んでおり、今後、人の流れの変化や、商業床の増加による競争激化が予想される。
小売業界に詳しい流通科学大商学部の白貞壬教授は「(神戸阪急には)百貨店が本来持つ社会的・文化的機能に立ち返り、周辺商業施設とも異なる『神戸らしさ』を体現してほしい」と話す。その上で「(大阪で買い物をする人が多い)神戸市東部から顧客を呼び込めれば、エリア全体のにぎわいにつながる」と注目している。