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ライダーの感覚取り込みAIが設計 タイヤ開発の熟練技術を自動化 住友ゴム×NEC

2022.11.16
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タイヤ設計に関わる自身の思考過程を人工知能(AI)に学習させた原憲悟さん(左端)。若手設計者への技能伝承に期待する=神戸市中央区脇浜町3

タイヤ設計に関わる自身の思考過程を人工知能(AI)に学習させた原憲悟さん(左端)。若手設計者への技能伝承に期待する=神戸市中央区脇浜町3

タイヤ開発の流れ。ライダーの評価を基に最適な仕様を人工知能(AI)が導き出す(住友ゴム工業提供)

タイヤ開発の流れ。ライダーの評価を基に最適な仕様を人工知能(AI)が導き出す(住友ゴム工業提供)

 住友ゴム工業(神戸市中央区)とNEC(東京)は15日、タイヤの熟練設計者のノウハウを生かし、試作品の改良法を導き出す人工知能(AI)を開発したと発表した。二輪車のタイヤ開発では、試作品を付けた車両をテストライダーが運転し、設計者と言葉を交わしながら改良を重ねる。このやりとりをAIに学習させ、最適な仕様を導く工程を自動化した。2023年から二輪車用で活用し、25年をめどに四輪車用にも広げる。(大島光貴)

 今回自動化したのは官能評価と呼ばれる工程。ライダーは手応えや乗り心地、剛性(タイヤの硬さ)などの評価をそれぞれに感覚的な言葉で表現する。時には「ぐにゅぐにゅ」「ぷにゅぷにゅ」などの擬音も登場するため、設計者には経験とノウハウが必要だった。

 「若手に活躍してもらうために、ノウハウの伝承が必要だ」。AI開発は、19年、二輪車用タイヤの設計に約20年携わってきた当時の住友ゴム第二技術部長、原憲悟さん(60)がNECに相談したことで始まった。同社の技術者と二人三脚で取り組み、ライダーの過去のコメントと、それに基づく原さんの改良案を数百件学習させた。

 AIでは、ライダーは試乗後、タイヤに関する数十の評価項目について選択式で回答。課題の原因を絞り込むために必要な問いをAIがライダーに示す。回答を重ねると、課題解決につながるタイヤの部材の厚みや形状などの仕様が提示される。昨年末時点で、質問の精度は実用化できる82%に達したという。

 さらに原さんの思考過程も見える化。AIを使って改良案にたどり着く流れも図示し、若い設計者が失敗した際、その原因を検証できるようにした。

 タイヤ設計歴が4年の佐藤亮太さん(32)は「ライダーに十分な質問ができずに失敗し、何度も設計を繰り返すことがあった。AIを使うとすぐに答えにたどり着け、設計しながら勉強できる」と期待。原さんは「教育や育成、ノウハウの伝承に優れたシステムだ」と太鼓判を押す。

 住友ゴムは30年にも、材料配合や分析、製造も含めてAI化する計画。タイヤ開発期間を短縮し、電気自動車や自動運転、脱炭素化に対応する技術開発に人材を振り向ける狙いもある。