経済
関西電力の朝来バイオマス発電所、停止へ 燃料の木材チップ、価格高騰「ウッドショック」で確保困難に
関西電力は30日、兵庫県産木材のチップだけを燃料に使う「朝来バイオマス発電所」(兵庫県朝来市生野町)の稼働を12月24日に停止すると発表した。新型コロナウイルス禍に伴う木材価格の高騰「ウッドショック」で燃料確保が難しく、供給を担う県森林組合連合会(神戸市中央区)が事業から撤退するため。再開のめどは立たず、関電は発電所の売却を含め検討するとしている。
■再開の見込みなく稼働停止
林野庁によると、木材が燃料の木質バイオマス発電所が、再開の見込みなしに稼働停止するのは全国でも珍しいという。
発電所は2016年12月に運転開始。関電子会社の関電エネルギーソリューション(大阪市)が運営し、一般家庭1万2千世帯分に当たる年間3700万キロワット時を発電する。固定価格買い取り制度を利用し、関電に売電している。
県の外郭団体・ひょうご農林機構(神戸市中央区)が山の未利用材の搬出に協力し、同連合会がチップに加工して供給。県や朝来市も加わる協定を結び、地元の森林資源を使って官民で発電に取り組む国内初のモデルとして注目された。
■リモートワーク普及の米国で
しかしコロナ禍でリモートワークが普及した米国などで住宅需要が上昇。輸入木材が高騰し、国産材の需要が増えた。発電用だった木材も住宅用に回り、全国的なバイオマス発電の増加もあって価格が上がった。
同連合会は、チップ確保のため木材の買い取り価格を引き上げたが、加工費を含めると発電所への売却価格を上回り、赤字がかさんだ。収支改善の見通しが立たず、継続は困難として事業からの撤退を申し出た。
官民連携の協定は12月25日付で解消する。朝来市は「地元の雇用などにも影響する。できるだけ早く事業再開が決まってほしい」。同連合会は「木材価格の高騰が近い将来改善する見込みはない。わずか6年で事業を終えるのは断腸の思い」としている。(横田良平、森 信弘、小日向務)