経済
服を売らずに何を売るの? アパレルメーカー、Z世代にアプローチ 有料イベント定期的に開催
中堅アパレルのクロシェ(神戸市中央区)は、Z世代と呼ばれる1990年代後半~2010年ごろに生まれた若者向けに、洋服を購入せず自由に試着して楽しめる有料の体験イベントを始めた。そこで得た情報を商品開発に活用するほか、Z世代と接点を持ちたい企業にも製品を手にとってもらう場を提供するなどのサービスを提供していく。
■大量廃棄問題
「keir.(ケアー)」の事業名で実施。「自分にとってちょうどよい心地よさを知る」の意で、「Z世代の課題解決」をテーマに10月から、関西学院大でマーケティングを学ぶ学生と一緒に始めた。この世代はインターネットで検索した履歴を基に商品を提案されたり、店員から薦められたりといった押し付けられることに悩みがちだという。
クロシェは、購入する顧客の年齢層が高くなっており、若い層を取り込むため参加者の声を商品開発に生かす。その場で購入できないことから衝動買いなどが減り、メーカー側が作り過ぎて大量廃棄につながるアパレル業界特有の問題の解決にもつながるとみる。
催しでは、クロシェの本社内のスペースに同社の洋服や靴が並べられ、自由に選んで試着したり、写真を撮ったりできる。値札は付いておらず、店員から話しかけられることもない。
価格など詳しい情報を知りたい場合は、会場に置かれた商品検索用のアイテムカードにあるQRコードから、電子商取引(EC)サイトにアクセスする。2~4人で参加でき、料金は105分で計3600円。
■売らないことを徹底
12月に開かれたイベントには2日間で23人が参加。大阪から参加した大学4年の女子学生3人は、互いに相談しながら制限時間ぎりぎりまで何度も試着。その後、プロ用の照明などを使ってさまざまなポーズを取りながら写真撮影していた。
3人は「お店と違って、気を使わずに試着でき楽しかった」「お店での試着は買うことを前提にしているから冒険できないが、ここでは色々な服を試すことができた」と、笑顔で話した。
担当者は「売らないことを徹底し、体験を提供している。文房具や化粧品などZ世代にアプローチしたい企業にもこの手法を使ってもらい、事業化したい」としている。
1月27、28日と、2月23~25日に開催予定。場所はいずれも同社本社。申し込みはケアーのホームページから。(塩津あかね)