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新明和工業が「無人飛行機」大型化へ ヤマハ発動機と共同開発 富士山麓で試験飛行

2022.12.29
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富士川の上空を旋回する新明和工業とヤマハ発動機の共同開発機「XUーL」=静岡市清水区

富士川の上空を旋回する新明和工業とヤマハ発動機の共同開発機「XUーL」=静岡市清水区

富士川の上空を旋回する新明和工業とヤマハ発動機の共同開発機「XU-L」=静岡市清水区

富士川の上空を旋回する新明和工業とヤマハ発動機の共同開発機「XU-L」=静岡市清水区

富士川の上空を旋回する新明和工業とヤマハ発動機の共同開発機「XUーL」=静岡市清水区

富士川の上空を旋回する新明和工業とヤマハ発動機の共同開発機「XUーL」=静岡市清水区

エンジンの動作確認をするヤマハ発動機の担当者=静岡市清水区、富士川滑空場

エンジンの動作確認をするヤマハ発動機の担当者=静岡市清水区、富士川滑空場

「XUーL」に搭載されたヤマハ発動機のスノーモービル用エンジン=静岡市清水区、富士川滑空場

「XUーL」に搭載されたヤマハ発動機のスノーモービル用エンジン=静岡市清水区、富士川滑空場

 航空機事業を展開する新明和工業(兵庫県宝塚市)が、新たな挑戦を進めている。固定翼の無人航空機などの開発に力を注ぐ。今秋には、機体のさらなる大型化を見据え、ヤマハ発動機(静岡県磐田市)と共同開発した航空機の試験フライトに着手した。空の可能性を追い求める現場を訪ねた。

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 10月、富士山を望む静岡市清水区の富士川滑空場。2人乗りの小型機が、滑走路上で木製のプロペラを勢いよく回した。

 「南エンドOKですか」

 操縦席に乗り込んだ新明和工業航空機事業部の宮内空野さん(37)が、滑走路の安全を確認し、表情を一段と引き締めた。

 機体は「XU-L」と言う。金属やカーボン、ポリエステル樹脂などでできた米国製の組み立て式機を新明和が改良。ヤマハの旧型スノーモービル用エンジン(499cc、2気筒)を、回転数が飛行機に合うように調整し、搭載した小型機だ。販売は想定しておらず、試験によって、エンジンの耐久性や冷却系統の動きなど膨大なデータを蓄積。有人機並みの大きさや性能を持った無人機の自律飛行システムを確立することが目的だ。

 エンジンがけたたましく音をたてた。全長10メートルほどの機体は速度を上げて離陸。高度150メートル付近まであっという間に上昇し、旋回を繰り返した。

 試験飛行は今回が2度目。関西に適度な試験場がなく、9月の初飛行では神戸から静岡まで機体を運び、高さ数メートルのジャンプ飛行を試した。今回は1回5分程度、複数回の周回飛行を重ね、データ収集など予定通りの試験を完了した。

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 新明和は航空機事業として、防衛省の救難飛行艇「US-2」のほか、米・ボーイングの大型旅客機787の主翼部品などを製造。新型コロナウイルス禍が影響した2021、22年3月期を除き、年間売上高は社全体の2割、400億円前後を計上してきた。

 無人航空機開発は15年ごろに取りかかった。勢いを増す市場や活用領域の拡大を逃すまいとの狙いからだ。これまで全長2・5メートルの固定翼型無人機や、水上での発着が可能な全長3メートルの無人飛行艇を生み出してきた。

 12月5日、市街地や住宅地などの上空で、ドローンを目視なしに自動で飛ばせる改正航空法が施行。高度に自動化された無人機には、通信や輸送、情報収集など幅広い可能性が宿る。五十川龍之社長(63)は「(ニーズを)注視し、ビジネス開発につなげたい」と強調する。

 開発を担う航空機事業部システム課の小松聡課長(51)は「長距離、長時間、高い安全性を求めると、機体にはある程度の大きさがいる」と、まだ見ぬ機体開発に不可欠な足場固めを進める。技術開発の速度を上げるためにも、今後、試験できる場所を関西に求める方針だ。

 滑空場では、無人飛行に関心を寄せる大手通信など複数企業の担当者が、機体にカメラやスマートフォンを向けた。パイロットを務めた宮内さんは「新明和が新しいビークル(乗り物)をどうやってつくるかを模索してきた数年だった。ようやく引き合いが出てきた」と手応えを口にした。