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戦略特区・養父市の農業事業からオリックスが撤退、赤字脱却できず月内にも 加西の農業法人に譲渡

2023.03.02
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水耕栽培でホウレンソウなどを作っている「やぶファーム」=養父市養父市場

水耕栽培でホウレンソウなどを作っている「やぶファーム」=養父市養父市場

 オリックス(東京)が、国家戦略特区の養父市で展開する農業事業から3月末にも撤退することが、1日までに分かった。同社は、水耕栽培でホウレンソウなどを手がける「やぶファーム」(兵庫県養父市)の筆頭株主だが、保有する全株式を農業法人サラダボウル(山梨県)の子会社「兵庫ネクストファーム」(兵庫県加西市)に譲渡。同社が4月以降、設備や従業員とともに経営を引き継ぐ。

■阪神間のスーパーなどに販売

 やぶファームは2015年に設立。オリックスの子会社「オリックス農業」やJAたじま(豊岡市)、養父市の全額出資会社「やぶパートナーズ」、地元農家が共同出資した。養父市内でピーマンなどを露地栽培し、18年には水耕栽培のハウス2棟を建て、ホウレンソウなどを生産してきた。

 同市は14年に戦略特区に指定され、企業が市内の農地を取得できる特例などが認められた。やぶファームは、指定後の早い段階に認定された事業者の一つで、特区事業を先導してきた。

 関係者によると、やぶファームの水耕栽培面積は約1ヘクタールで年間約140トンを生産。阪神間のスーパーなどに販売してきたが、設立当初からの赤字経営から脱却できなかったという。オリックスは別の子会社を通じて、長野県・八ケ岳でも葉物野菜を水耕栽培していたが、昨春に撤退している。

■サラダボウルが名乗り

 オリックスは養父市の農業事業からも撤退を検討。後継事業者を探す中で、トマトや葉物野菜の栽培を全国で手がけるサラダボウルが名乗りを上げた。今後は、同社子会社の兵庫ネクストファームがやぶファームの経営を引き継ぐ。

 兵庫ネクストファームは14年設立で、加西市内の大規模ハウスでトマトを栽培。やぶファームへの経営参入で、2カ所目の事業所となる。兵庫ネクストファームは役員派遣も検討する。

 オリックスからネクストファームへの事業譲渡について、やぶファームの株主である地元の農家は「農地を手放したり、雇用がなくなったりしなさそうなのでほっとしている」と話す。養父市の広瀬栄市長は「オリックスは特区事業をけん引してくれ、市の特区の知名度と信頼感が上がったことは間違いない。後継事業者が野菜栽培を本業としていることも安心材料」としている。

 同市では特区指定に基づき、22年3月までに14事業者が進出。これまでに、地元農産物を使った商品開発などを行った1事業者が、法人解散に伴い19年2月に撤退している。