ひょうご経済プラスTOP 経済 播磨灘の養殖カキ、貝毒の出荷規制を1週間に短縮 最新の研究で従来の半分程度に 兵庫県が新基準

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播磨灘の養殖カキ、貝毒の出荷規制を1週間に短縮 最新の研究で従来の半分程度に 兵庫県が新基準

2023.03.13
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水揚げのため、養殖いかだから引き上げられるマガキ=相生市の相生湾沖

水揚げのため、養殖いかだから引き上げられるマガキ=相生市の相生湾沖

 短期間で大きく育ち「1年カキ」として親しまれる播磨灘の養殖マガキ。兵庫県水産技術センター(明石市)による最新の研究成果が、貝毒が出た際の出荷自主規制の短縮につながっている。昨年10月に県の要領が見直され、12月の発生では規制期間は1週間と、従来の半分ほどの短さで解除された。今後も生産者らの経済的なダメージの軽減が期待されている。

 播磨灘では西部を中心にカキ養殖が盛ん。県内のカキ類は2021年に全国4位の1万148トンが水揚げされたがそのほぼ全量を占める。播磨灘のマガキの貝毒は18年春に初めて発生。20年12月には大規模に広がり、出荷の自主規制は最長1カ月近くに及ぶなど生産や流通に大きく影響した。

 規制解除には、7日おきの検査で3回続けて規制値以下となる必要があり、短くても2週間は出荷できなかった。ただ15年に国がガイドラインを改正し、貝種や海域別に科学的根拠があれば出荷自主規制を短縮できるようになっていた。

 そこで同センターは、18~20年に播磨灘の養殖マガキで発生した貝毒の特性やリスクを調べた。その結果、毒性は初めて規制値以下となってから半分にまで1週間で減る可能性が高いことが判明。さらにシミュレーションしたところ、毒性の半減後に再び規制値を上回るマガキが市場に出る確率は極めて低いことも分かった。

 この研究を基に、県は昨年10月に要領を改正。毒性が初めて規制値以下となった1週間後に複数の貝を検査し、いずれからも原因となる植物プランクトンが検出されない▽当該漁場の海水に含まれるプランクトンの密度が一定値以下-などを条件に、出荷の自主規制を解除できるようにした。

 カキの需要期だった昨年12月に姫路市西部で貝毒が確認されたケースで、この要領を初めて適用。規制値を上回った貝を採取した翌日に採取した貝の毒性はすでに規制値を下回っていた。その1週間後に採取した二つの貝からは何も検出されなかった。その後も規制値を上回る貝毒は発生していない。

 県水産漁港課は「要領改正によって、生産者の経営負担を軽減できるメリットは大きい。今後も出荷規制の短縮に協力していきたい」としている。

【貝毒】毒性のある植物プランクトンを餌にする二枚貝に発生する。まひ性と下痢性がある。加熱、冷凍しても毒は消えず、まひ性では、大量に食べると筋肉のまひやめまい、吐き気などを引き起こし、呼吸不全で死ぬこともある。貝からは排せつされるため、プランクトンがいなくなれば貝の毒性はなくなる。規制値を超えた貝の販売は食品衛生法で禁止されている。