経済
播州織の職人、オリジナル生地開発し新ブランド 風に包まれたような着心地の「流風織」、ジャケットやパンツ発売
織物職人が、自ら企画、デザインした生地による製品を販売するブランドを立ち上げた。光を通すほどに通気性が高く、伸縮性に優れるこだわりの生地。風に包まれたような着心地から「流風織」と名付けた。仕立てたジャケットなどをインターネットで発売し、想定を大きく上回る反響を得ている。(大盛周平)
兵庫県北播磨地域の地場産業、播州織を手がける橋本裕司さん(47)=兵庫県多可町。20年前、祖父の代からの家業を継いだ。糸の先染めやのり付けなどを分業する播州織で、国内外のブランド向けにシャツなどの生地を織ってきた。
播州織は、生産量が最盛期だった1980年代の1割以下に減少。安価な海外産との競争で厳しい状況が続く。その中で約5年前から、ブランド向けの請け負いを減らし、服飾メーカーや問屋へのオリジナル生地の販売量を増やしてきた。
さらに、服として身に着ける消費者とつながろうと、新たな生地や商品開発に取りかかる。昨年度、県中小企業団体中央会(神戸市中央区)の支援で、東京のIT企業「wagamama合同会社」代表の原田幸典さん(37)と連携。ホームページ(HP)制作やブランド化を進めてきた。
綿だけでなくさまざまな素材の糸を試し、織り方を変え、織機も改良。昨夏、100を超える試作の末、流風織が完成した。ポリウレタンをわずかに含む糸で伸縮性を向上。40年以上前の古い織機で糸を張りすぎずにゆっくりと織ることで、絞りのような風合いの丈夫で軽い生地ができた。
服飾への加工は、原田さんの実家が営む広島県の縫製工場に依頼。襟やボタンをなくすなど性別を問わず着こなせるジャケットとパンツに仕立ててもらった。
ブランド名は「HASHIMOTO Vintage(ヴィンテージ)」とし、HPも開設した。3月、新商品宣伝サイト「Makuake(マクアケ)」で予約販売を始めると、1週間で50着を受注。これまでに当初想定の8倍を超える約170万円を売り上げる。橋本さんは「この試みが、播州織の活性化につながってほしい」と産地への波及効果を期待する。
ジャケットは2万8900円~。パンツは1万7850円~。同サイトでは5月14日まで販売。その後、ブランドのHPで展開する。