ひょうご経済プラスTOP 経済 人工衛星データで散布肥料調整 アプリと農機使い実証実験、兵庫で始まる

経済

人工衛星データで散布肥料調整 アプリと農機使い実証実験、兵庫で始まる

2023.06.13
  • 印刷
肥料を自動調整できる田植え機。右側の画面で散布量が分かる=丹波篠山市岩崎

肥料を自動調整できる田植え機。右側の画面で散布量が分かる=丹波篠山市岩崎

最新のアプリと田植え機で、植え付けと肥料の同時散布を行うアグリヘルシーファームの社員=丹波篠山市岩崎

最新のアプリと田植え機で、植え付けと肥料の同時散布を行うアグリヘルシーファームの社員=丹波篠山市岩崎

色の濃淡で、農地の栄養状態が分かる営農アプリ「ザルビオフィールドマネージャー」の画面(丹波県民局丹波農業改良普及センター提供)

色の濃淡で、農地の栄養状態が分かる営農アプリ「ザルビオフィールドマネージャー」の画面(丹波県民局丹波農業改良普及センター提供)

 人工衛星の画像データから割り出した農地の状態に合わせ、肥料を散布する量を自動調整するアプリと農機具を使う実証実験が、兵庫県内で始まった。丹波篠山市では県と地元農業法人が、新たに導入した最新モデルの田植え機で植え付けを実施。個人の勘に頼ってきた営農を数値化、自動化し、ウクライナ情勢などの影響で高騰する肥料の節約や、収穫量のアップを目指している。(那谷享平)

 2021年4月から全国農業協同組合連合会(JA全農)が、国内での普及を図る営農アプリ「ザルビオフィールドマネージャー」を開発したドイツ企業の日本法人のほか、農機メーカー、地元の農業法人などと連携する。全農兵庫県本部(神戸市中央区)によると、県内での実証は丹波篠山の水稲、豊岡の大豆、加古川の小麦で行われている。

 同アプリは、各国の衛星が撮影した過去15年分の画像データを活用する。作物の色合いなどから、一つの農地内でも場所によって異なる土壌の栄養状態や病虫害の発生リスクなどを解析。散布する肥料を自動調整できる農機と連動させ、痩せた場所では多めにまくなどして、生育のむらを抑え、収穫量の増加につなげる。

 丹波篠山市では、丹波県民局が、同市味間奥の「アグリヘルシーファーム」に委託。同社の田んぼ約60ヘクタールのうち約4ヘクタールで、肥料の通常散布▽自動散布▽肥料を2割減らした上で自動散布-の3パターンを比較、検証する。結果は農機やアプリのメーカーと共有し、効率的な営農やアプリと機材の改善に生かす。

 5月下旬、関係者20人余りが見学する中、アグリ社の社員がヤンマー製の最新田植え機で、植え付けと肥料の同時散布を実演した。アグリ社はアプリを昨年、田植え機を今年から導入。ヤンマーによると、同機の稼働は県内初で、近畿地方では滋賀県での事例に次いで2例目という。

 運転したアグリ社の庄司一真農場長は「生育のむらや肥料の適切な量を言い当てるのは、10年の経験があっても難しい。感覚でやっていた部分をアプリや機械が勝手にやってくれる。実験の結果が楽しみ」と話していた。