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雨で軟らかくなるタイヤ、住友ゴムが開発 ブレーキ、路面状況で変わらず「常識覆す技術」来秋発売へ

2023.12.01
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10月に開かれたジャパンモビリティショーで「アクティブトレッド」の試作品を紹介する住友ゴム工業の山本悟社長=東京都内(同社提供)

10月に開かれたジャパンモビリティショーで「アクティブトレッド」の試作品を紹介する住友ゴム工業の山本悟社長=東京都内(同社提供)

「アクティブトレッド」に使われた化学材料。住友ゴム工業が開いた説明会で展示された=東京都内(同社提供)

「アクティブトレッド」に使われた化学材料。住友ゴム工業が開いた説明会で展示された=東京都内(同社提供)

「アクティブトレッド」の技術説明会で質疑に応じる住友ゴム工業の役員たち=東京都内(同社提供)

「アクティブトレッド」の技術説明会で質疑に応じる住友ゴム工業の役員たち=東京都内(同社提供)

 住友ゴム工業(神戸市中央区)は、晴れの日でも雨の日でも、ブレーキをかけてから停止するまでの距離が変わらないタイヤの素材を開発した。乾いた路面を走るときは硬く、雨天や低温時には軟らかくなる特性を持ち、「雨や雪の日は滑りやすい」という、これまでのタイヤの常識を覆すという。同社は次世代のオールシーズン(全季節用)タイヤとして来秋の発売を目指す。(石川 翠)

 住友ゴムは2017年、次世代タイヤの開発を盛り込んだ構想を打ち出し、外部の協力も得て研究に取り組んできた。今回開発したのは、路面状況によってタイヤの表面の軟らかさが変わる技術。「アクティブトレッド」と呼んでいる。

 通常、タイヤは雨が降ると、路面とゴムの間に水が入り、路面の凹凸への引っかかりや粘着力が弱くなり、運動エネルギーの吸収力も減少する。このため、路面との摩擦が少なくなり、グリップ力が低下する。乾いた路面と同等の摩擦力を持たせるには、ぬれたときに素材が40%軟らかくなるようにする必要があった。

 同社はまず、神戸・ポートアイランドにあるスーパーコンピューター「富岳」を活用して材料をシミュレーション。次にENEOSマテリアル(東京)などの化学メーカーの協力を得て、材料の合成に取り組んだ。水分子が触れるとゴム(ポリマー)と補強材のシリカが分離し、軟らかくなる結合材を採用したほか、水の浸透をしやすくする補助剤も開発した。

 その結果、ぬれた路面でタイヤの表面が軟らかくなり、乾燥した路面では元の硬さに戻ることに成功。テストコースでの試運転では、ドライバーが体で感じるほどの変化だったといい、ブレーキ制動距離を測定するとほぼ差がなかった。ただ、十分に軟らかくなるまでにまだ時間がかかる課題があるため、改良を続ける。

 さらに、凍った路面でもグリップ力を維持できるよう開発も進めている。低温で軟らかくなる新素材を北海道大と共同研究し、スタッドレスタイヤと同等の性能を目指している。

 同社の村岡清繁取締役常務執行役員は「路面状況から(タイヤ自体を)変えるという発想の転換から生まれた革新的な技術」と強調した。24年秋に発売時の性能や価格、サイズなどは未定。27年には電気自動車(EV)向けのタイヤを発表することも目標としている。