小山さんの話

―地震の瞬間は
「1階から2階に上がったところ。突き上げられて体が浮き、四つん這いの姿勢でしかいられない。布団を敷いていた場所はたんすが横倒しになっていた。家族の無事を確認した後、蹴破って外に出ると見渡す限り家がつぶれていました」

―がっくりきましたか
「いいや、そうでもない。うちだけやったらそら落ち込むけど、街全体がつぶれているから、仕方ない。それよりも生き埋めになっている人助けなと走り回った。けど、人の力なんか知れてる。たんすの下に埋まった人の上にさらにコンクリートが乗っている。何人かでやってもびくともしない。『痛い、痛い』という声がだんだん小さくなっても、『頑張れ』と言えない。気が付いたら午後。子どもから『うちら今日からどこで寝んの』と言われるまで時間の感覚なかった」

―…お店の方は
「長田で店構えて15年。よそには動かん。すぐに更地にして仮設店舗で商売始めた。人間、窮地に陥ると力出る。誰かが頑張れば、その周りも『俺も俺も』と活気づくんや。震災直後、働きすぎて肺炎なりかけたり、苦労も多かったけど、今はいい経験さしてもらったといえるな」

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これからの街づくりについて

―公園がにぎやかですね
「反対した時期もあったけどな。公園ができて、道も広くなってよそから引っ越してきた人が、街並みにびっくりしている」

―よいことずくめですか
「そうでもない。道が広くなって、お向かいさんと遠くなった分、昔みたいな人情味は薄れた。活気もなくなった。さから、盆踊りや餅つき、そうめん流しとかやって、地域で人間関係ができるような工夫している。こないだも『こないだのバス旅行、ありがとう』とあいさつされた。そうやってみんなが顔見知りになっていけば、もっともっといい街になる。昔の下町みたいにするには時間はかかるけどな」

―新しい住民の人も参加しているんですか
「そう、いつまでも古株が仕切ってたら街がようならん。いい加減卒業させてもらわな」

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