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アリを24日間観察し、大量の写真記録をまとめた志賀葵生君=加東市
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アリを24日間観察し、大量の写真記録をまとめた志賀葵生君=加東市
砂に埋まりかけているセミの死骸。茶色い頭部と羽が見える(志賀君提供)
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砂に埋まりかけているセミの死骸。茶色い頭部と羽が見える(志賀君提供)
観察や記録に使ったタブレット端末やノート型パソコン=加東市
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観察や記録に使ったタブレット端末やノート型パソコン=加東市

 庭で見つけたきれいなセミの死骸に、好奇心が反応した。アリが群がるその体は、円状の砂に埋まりつつある。「何をしてるんだろう? アリが埋めて解体するのかな」。昨年8月6日、高校野球の甲子園大会が開幕した朝、兵庫県加東市の志賀葵生君(12)の観察が始まった。

■セミ解体の様子、写真550枚に

 普段から理科好きな滝野東小学校6年生。すぐに自分のタブレット端末で写真を撮り始めた。5年生の自由研究では「永久機関」をテーマにいくつもの装置を厚紙などで作るほど打ち込んだが、審査基準にそぐわず選外になった。「今年こそ」と考えた夏、ひらめいたのがアリの観察だった。

 「2日ぐらいで終わると思っていた」。軽い気持ちで始め、日中、1~2時間おきに写真を撮り続けた。

 「見つけた時のセミ。体や羽にはツヤがある」(8月6日)

 「(アリの)数が増え20匹くらいになった」(7日)

 前から、上から、斜めから、じっくりセミを眺めた。観察を忘れそうになると、仕事中の母美枝さん(45)から届く「あり!」のメールで庭へ飛び出した。

 3日、5日、1週間と時間がたってもアリは働き続けた。雨が降って砂が流されても、翌朝から埋める作業を再開。しばらく姿を消す日もあったが、再び砂をかけるアリたちに「なかなか油断できなかった」。

 観察開始から20日。セミは残ったままだが、アリはほぼ姿を見せなくなった。

 「(セミを)ひっくり返したいけど、解体中だったら大変だ」(25日)

 さらに1日、2日…変化はない。悩んだ挙げ句、2学期目前の29日、最後の観察を決意。早朝、割り箸でそっとセミを転がした。

 セミの形は保たれ、一見して異常はなかった。「おなかの部分は食べられていると予想したけど、外れたのかな…」。もう一度目を凝らすと、頭部に小さな穴を見つけた。そこからセミの内部をのぞき込む。中身は空っぽだった。「やられた! 一体いつの間に」

■いつまで続くのか、最後はどうなるかな

 24日間連続で撮影したセミの写真は550枚以上。模造紙10枚以上の自由研究「アリは器用な解体屋」は、加東市の審査で優秀賞に選ばれた。「アリが解体する場面は見れなかったり、いつまで続くのか心配になったりしたけど、やりきってすっきりした」

 セミの死骸はその後も庭にあり、志賀君はまだ様子を見続けている。「最後はどうなるかな。見届けたい」

=おわり

達人の秘けつ◇毎日欠かさず、地面をのぞき込むようにセミとアリを見続けた志賀君。「結果を知りたいという思いが強かったのが、続けられた一番の理由だと思う」とこともなげに笑う。でも、小学生の夏休みは遊びやイベントで誘惑も多かったことだろう。観察用のタブレット端末や時計をそばに置いて、予定を忘れないように工夫したという。「興味を持ったことへの気持ちがあればできる」と繰り返す表情が、なんともまぶしい。

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