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名古屋グルメ「あんスパ」美味の秘密は摩耗だった

2020.01.13
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名古屋名物あんかけスパゲティの発祥「ヨコイ」の横井慎也社長(右)と、日本製麻の中本広太郎社長=神戸市中央区海岸通

名古屋名物あんかけスパゲティの発祥「ヨコイ」の横井慎也社長(右)と、日本製麻の中本広太郎社長=神戸市中央区海岸通

名古屋のあんかけスパゲティ専門店で8割のシェアを誇る日本製麻の「ボルカノスパゲッチ2・2ミリ」の乾麺=神戸市中央区海岸通

名古屋のあんかけスパゲティ専門店で8割のシェアを誇る日本製麻の「ボルカノスパゲッチ2・2ミリ」の乾麺=神戸市中央区海岸通

極太のパスタの周りにぐるりとソースをかける名古屋名物のあんかけスパゲティ(スパゲッティヨコイ提供)

極太のパスタの周りにぐるりとソースをかける名古屋名物のあんかけスパゲティ(スパゲッティヨコイ提供)

 ハムや野菜が盛られた極太麺のまわりに、とろみのある茶色いソースがぐるりとかかった、あんかけスパゲティ(通称・あんスパ)。みそカツ、手羽先、ひつまぶしと肩を並べる名古屋の人気グルメだ。「そ~れ」や「チャオ」「からめ亭」など有名店は数あるが、そこで提供されている麺のほとんどを、神戸に本社を置く日本製麻が製造・販売する。なぜ、名古屋グルメの名店に神戸の麺が選ばれ続けるのか。そこには、ちょっとだけ太~い訳があった。

 あんスパを考案したのは名古屋市内で専門店「ヨコイ」を展開するスパゲッティヨコイ(名古屋市)の創業者、横井博さん(故人)。ホテルで洋食のコックをしていた横井さんは1963年に独立。当時はパスタやピザは珍しく、イタリアの家庭料理からヒントを得て、日本人でも食べやすくアレンジしたミートスパゲティを開発した。ソースにとろみを付けた理由は「熱いものはチンチコチン(熱々)で出さなあかん」と、冷めにくくするためだったそうだ。

 ミートスパゲティは名古屋人好みの濃厚な味で人気を呼び、たちまち店の看板メニューに。「多くの人にこの味を知ってもらいたい」とレシピを公開すると、街中に広まった。その後、別の店が「あんかけスパゲティ」と名付け、名古屋のご当地グルメになったという。

 あんスパに欠かせないのは、何といっても極太の麺。細麺だと濃厚なソースが絡みすぎ、しょっぱくなってしまうんだとか。

 横井さんは創業当時、兵庫県尼崎市にあった高橋マカロニ製造所から、規格サイズの中で最も太い2・1ミリの乾麺を仕入れていた。71年、同社を日本製麻が買収。工場を同県加古川市に移し、機械を新調すると問題が起きた。

 「麺が、ほそなっとるがね!」

 横井さんからの連絡を受けて同社が調べると、以前の麺は、生地を押し出す金型の穴が摩耗して広がり、直径が2・2ミリになっていたことがわかった。

 たった0・1ミリ。されどこの0・1ミリの差で、風味と食感のバランスが損なわれる恐れがあった。同社は急きょ、2・2ミリの金型を特注し生産を始めた。製品名も「ボルカノスパゲッチ2・2ミリ」と命名。以来、あんスパ用の定番になった。

 あんスパが広く知られるようになったきっかけは、05年の愛知万博(愛・地球博)。テレビ番組などで「名古屋めし」として紹介され、一躍全国区に。大手製麺会社も極太市場にこぞって参入した。しかし、名店はボルカノにこだわり続けた。

 「ゆで時間や作る手順など、各店が研究を重ねて自慢の味を築き上げてきた。そう簡単に麺を変えるなんてできませんよ」と話すのは、横井さんの孫で現社長の横井慎也さん(32)。日本製麻によると、ボルカノは名古屋のあんスパ専門店で約8割のシェアを占めるという。同社社長の中本広太郎さん(49)は「0・1ミリというわずかなことに、両社が真面目に向き合った結果、今があるんでしょうね」と半世紀に及ぶ太い絆を支えたこだわりを、笑顔で話した。(中務庸子)