経済
創業230年超の老舗 「文化と技術を次代に」と開発した仏壇が、これまでにないコンパクトさ
創業230年を超す老舗の仏壇店「原田光明堂」(兵庫県姫路市)が、これまでにないコンパクトな仏壇を開発した。A4判ほどの漆塗りの箱型で、ふたを開いて仏画などの本尊を安置する。装飾には蒔絵や錺金具といった伝統の職人技を駆使。場所を選ばずに持ち運ぶこともできる新たな祈りの形を提案する。(広岡磨璃)
コンパクト仏壇「漆恵」。幅32センチ、奥行き23センチ、厚さ6・5センチで、ヒノキの木地に天然漆を塗り上げる。表面の装飾は、仏壇に用いる蒔絵や錺金具師が手がける銀板、姫革細工、故人ゆかりの衣類を使った布工芸「カルトナージュ」から一つを選べる。内部は大小七つに区切られ、お鈴のほか、ろうそく立てなどオリジナルガラス製仏具5点を備え、経本や数珠も収納できる。
姫路仏壇は江戸期に始まった地場産業で、大型で豪華な装飾が特徴。同社は記録をたどれる天明年間(1781~89年)を初代とし、原田真一郎社長(65)が8代目に当たる。
原田社長が家業に入った40年前は、住み込みを含む塗師や蒔絵師、彫刻師ら20人余りで仏壇を仕上げていた。仏間や和室の減少など生活様式の変化から職人は約半数に減少。その大半は60歳以上と高齢化も進む。
仏壇の需要は「家具調」「モダン」と呼ばれる小型、簡素なものへと移る。それとともに出番の減る伝統の職人技を残そうと、原田社長と妻まり子さん(64)、長女で家業に入った西銘寛子さん(34)が1年がかりで漆恵を考案した。西銘さんは「手を合わせて、ほっとしたひとときを大切にする仏壇の文化、技術を次代につないでいきたい」と話す。
本体は5色展開で、緑や青の漆塗りもある。表面の装飾4種と組み合わせて選べる。受注生産で、55万~72万6千円。原田光明堂TEL079・293・2577