事業継承編 第1部
支援元年(上)「啓発」 大量廃業、地域挙げて阻止へ 神戸ザック、亀井堂総本店(神戸市)
新長田駅から西へ5分ほど歩くと、「神戸ザック」の工房がある。代表の星加(ほしか)弘之(76)が1971年に創業し、主に登山用ザックを作ってきた。子ども2人はそれぞれの道を歩み、後継者はいない。妻とパート3人がミシンを動かし、月50~60個を出荷する。「学校の同窓生で働いているのは、自分だけになった」
エベレストに挑む山岳隊から、デイパックとして一般消費者にも使われる「イモック」のブランドを消滅させるのは惜しい。今年5月に体調を崩し、8月に自らが神戸市産業振興財団に事業承継の相談を持ち掛けた。同財団は7月、税理士ら5人の専門家でつくる支援チームを発足し、承継先の候補となる起業家の登録を始めた。神戸ザックには行政書士を派遣し、年明け以降もブランド価値や在庫評価をもとに売却額を算定、後継者探しを加速させる。「よそにない製品を作ってきた自負がある。イモックの独創性を受け継いでくれる事業者に託したい」。星加は期待を込める。
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