衆院選 いま私は(10)町工場の経営者・金井清さん(70)=明石市

2021/10/31 05:30

明石発動機工作所を営む金井清さん=明石市港町

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 1920(大正9)年に祖父が一族とともに立ち上げた機械製造会社を営んでいる。創業当初は船のエンジンをつくっていたが、いまは建設機械や工具のメーカーに対して製造工程で用いる機械を供給したり、電機メーカーに部品を納めたりしている。
 2008年に起きたリーマン・ショックから立ち直って以降、当社の事業を取り巻く環境はよかった。(12年末に始まった)景気拡大の局面で、製品を納める得意先が生産を増やしたからだ。得意先が収益を元手に設備投資を行い、そこへ私たちも機械を納めさせてもらった。大企業が潤い、町工場に仕事が回る-という流れを肌で感じた。
 新型コロナウイルスで受けた打撃は当社の場合、リーマン・ショックと比べると穏やかだった。リーマン時は売り上げを失った大企業が設備投資を手控え、当社の売り上げは半減した。コロナ下で売り上げが落ち込んだものの、仕事がなくて休業を余儀なくされる事態にまでは至らなかった。
 これから日本のものづくりが競争力を持つうえで大切なのは、「現場を支える人」が育つことだ。そのためには、全員が大学進学を目指すことを前提とした教育のあり方が改まってほしい。「受験勉強は嫌いだけれど機械が好き」という若者が目を輝かせ、早い段階で現場に入ってきてもらいたい。
 子どもや若者たちが面白いと感じられるものと出合い、その分野で能力を思い切り伸ばせる-。ものづくりに限らず、幅広い分野でそんな環境を整えることが、社会全体の活力につながるのではないか。(長尾亮太)
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