経済
守れ、空のインフラ 被災の空港は今(3)交通アクセス
■教訓生かし減災、復旧へ
東日本大震災と2018年の台風21号では、いずれも空港に通じる陸路が途絶した。
仙台空港とJR仙台駅を結ぶ空港アクセス鉄道。空港駅と隣の美田園(みたぞの)駅に津波が押し寄せ、両駅間のトンネル(約570メートル)が水没、全線運転再開に半年以上を要した。
04年度からのレール敷設時、トンネルには津波や河川の氾濫でも水が入らない設計だったという。運行する仙台空港鉄道の難波克彦総務課長(54)は「あのような津波は考えられなかった」と振り返る。
震災後、沿岸には防潮堤が築かれ、海に近い道路もかさ上げされた。それでも仮に同じような災害が発生したら。「乗客の命を最優先に『トンネル対策』がメインになる」と難波さん。内部で電車が止まったことを見越し、停電時には指令室から遠隔でトンネル内を点灯。内壁に乗客が降車する避難用はしごを50メートル間隔で設け、運転士が誘導する訓練も定期的に行う。
空港駅の1階に置いた電気系統が冠水した教訓から、機材は可能な限り2階に上げた。バスによる代替輸送の手段も整えている。難波さんは「運行ルートは変えられず、被害はゼロにはできない。いかに減らし、早期復旧を図るかだ」と胸の内を明かす。
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「衝撃的な映像だった」
関西空港の運営会社、関西エアポートの石川浩司執行役員(61)は、空港と対岸を結ぶ連絡橋にタンカーが衝突した光景を振り返る。風雨により、連絡橋が一時的に不通になる事態は経験済み。しかし、巨大な船が連絡橋を損壊するのは、誰にも想定外だった。
片側3車線の連絡橋は、被災翌未明から片側交互通行に切り替わり、当座の往来は緊急車両などに限られた。連絡橋の下を通る鉄道は2週間後に運行を再開したが、道路はマイカーの通行に1カ月、全面復旧に7カ月を要した。
道路を管理する西日本高速道路は「被害をゼロにするのは難しい。早期復旧には最善を尽くしつつ、有事の代替輸送には、関係機関の協力が欠かせない」とする。
騒音問題などを考慮した海上空港は、連絡橋の機能が失われれば途端に「陸の孤島」となる。船による橋の損壊を避けようと、海上保安庁などは大型台風の直撃などが予想される場合、関空と神戸空港から約5・5キロメートルの海域で、船舶の航行を規制する新たなルールを設けた。
海上輸送では19年、関西エアが台風21号でも協力を仰いだ高速船「神戸-関空ベイ・シャトル」を運航するOMこうべ(神戸市中央区)と災害時の協力協定を結んだ。神戸空港でも、神戸・ポートアイランドにかかる連絡橋の途絶を想定した図上訓練を実施。有事には市地域防災計画に基づき、民間船の協力も得て空港島から中突堤中央ターミナル「かもめりあ」まで運ぶ体制を整える。
災害に強い空港づくりを空港単体で成し遂げることはできない。交通アクセスの被害をいかに抑えるかも、備えに直結する。(横田良平)
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