ひょうご経済プラスTOP 経済 守れ、空のインフラ 被災の空港は今(4)新BCP

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守れ、空のインフラ 被災の空港は今(4)新BCP

2021.03.17
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大津波警報などの発令時に、旅客らを高台避難誘導するための神戸空港の展望デッキ=神戸市中央区

大津波警報などの発令時に、旅客らを高台避難誘導するための神戸空港の展望デッキ=神戸市中央区

仙台空港のターミナルビル1階に掲示された津波到達地点の表示板。津波は高さ3・02メートルまで到達した=宮城県名取市

仙台空港のターミナルビル1階に掲示された津波到達地点の表示板。津波は高さ3・02メートルまで到達した=宮城県名取市

■規模増す脅威一丸で対応

 北海道南西沖地震(1993年)を皮切りに、平成(89~2019年)の間、日本の空港に被害を与えた主な自然災害は計12に上る。国は被災のたびに施設の耐震性や津波対策を打ち出してきたが、事業継続計画(BCP)に重点が置かれたのはここ最近だ。分岐点は18年だった。

 災害級の大雪で成田空港滑走路閉鎖(1月)▽新燃岳(しんもえだけ)噴火で鹿児島空港80便欠航(3月)▽西日本豪雨で広島空港のアクセス遮断(7月)▽台風の高潮で関西空港孤立(9月)▽北海道胆振(いぶり)東部地震で新千歳空港停電(同)-。被災が続き、生活や経済への影響は国の危機管理を揺さぶった。

 これまで空港のBCPは各機関が個々に策定し、運用してきた。だが関空や新千歳の被災は「経験したことのない事象」(国土交通省航空局)で、個々に解決できるレベルを超えた。国は新たに各機関が一体になり、横の連携を強化する「統括的災害マネジメント」へとかじを切った。

 19年4月、対応計画として「A2『Advanced(先進的な)Airport(空港)』-BCP」を提唱し、定期便が飛ぶ全国95空港に策定を求めた。

 新BCPは、空港機能維持に必要な電力供給▽通信▽上下水道▽燃料供給▽アクセス-が失われた場合の対応を求める。従来は「地震」「津波」など災害別だったが、機能喪失別に想定をくくり直して、あらゆる災害への活用を目指す。

 航空局の担当者は「概念の大きな転換。自然災害は年々規模を増しており、関係機関一体で航空網維持を図ってほしい」とする。

     ◇

 仙台空港では、19年6月に新BCPを策定。東日本当時は避難者対応などが明確でなく、16年の民営化以降もBCP整備が課題だったという。運営会社で危機管理を担う更級(さらしな)大介さん(44)は「国がモデルを示したことで計画が作りやすくなり、協力も呼び掛けやすくなった」と話す。

 関西エアポートも19年4月に新BCPを策定。台風21号と同等の浸水でも24時間以内の運用再開を図る。

 有事には、関係機関を一堂に集めた総合対策本部で情報を一元化。運航管理の中心となるオペレーションセンターを分散し、機能維持と早期復旧を目指す。さらに平時から緊急事態を想定し、各社員が複数の業務を担えるよう訓練を積む。

 「地震や航空事故は予測できない。個々人がマルチに動ければ対応力が高まる」と、石川浩司執行役員(61)は話す。

 神戸空港では神戸市や航空会社、病院など29機関で総合対策本部を構成。震度5強以上の地震や大津波警報発令時、大型台風接近時の避難行動を整える。ターミナルビルに700人がとどまる想定で、500ミリリットルの水8400本や食糧などを備蓄する。

 兵庫県の想定では、南海トラフ巨大地震で、神戸市中央区に迫る津波高は最大3・9メートル。神戸空港は護岸が6メートル程度あるため、波が護岸を越える可能性は低いとされる。一方、県が最悪想定とする台風の高潮被害では、滑走路が1~3メートル浸水すると予測されている。

 備えに絶対はない。年々大きくなる脅威への態勢整備は、まだ始まったばかりだ。(横田良平)

【バックナンバー】

(3)交通アクセス

(2)運航再開

(1)3・11そのとき