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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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薫る街 神社で出合った「ミーコ」 2020/11/11

 コーヒーと喫茶店は、港町によく似合う。それは、開港とともに開けた神戸の元町・三宮を語るには欠かせないモダン文化の一つ。コーヒーの一大生産地・ブラジルへの移民の窓口だったことも、見逃せない。神戸でフリーペーパー「甘苦(あまにが)一滴」を発行する田中慶一さん(45)の案内で、“薫る街”へと旅に出た。

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ホワイトの1号店。のれんには「ミルクコーヒ」とある(萩原珈琲提供)

 三宮神社(神戸市中央区三宮町2)とコーヒー。一見、とっぴなようだが、戦前の三宮神社境内は東の盛り場。映画館や芝居小屋でにぎわった。「三宮センター街三十年史」掲載のかいわいの復元図を見ると、コーヒーの露店が10軒以上も並んでいる。

 「露店でコーヒーの味を知り、なりわいにするようになった人の名を欠くことはできません」とコーヒーライターの田中慶一さん(45)は言う。

 一人は、「UCC上島珈琲(コーヒー)」(同市中央区港島中町7)創業者の上島忠雄。食料品問屋勤めを経て、1933年に独立するが、露店の「ミーコ」(ミルクコーヒー)の繁盛ぶりに、焙煎(ばいせん)・卸を手掛けるようになる。

 駅売店でコーヒー牛乳の瓶を返さなくて済むよう、69年に世界初の缶コーヒーを発売したことは、あまりにも有名だ。

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1969年発売のUCCの缶コーヒー。最長寿ブランドとしてギネス世界記録に認定された=神戸市中央区港島中町6

 もう一人は、神戸を代表する大衆喫茶「ホワイト」チェーン創業者の浦春友。ホワイトは、2月の「兵庫マンスリー」でも取り上げたが、看板メニューのミーコとともにオールドファンに親しまれてきた。

 田中さんによると、浦は愛媛から神戸に出てきて、21年ごろから靴下の行商を始めた。三宮神社かいわいを自転車で通りがかると、露店に足を運ぶようになったという。

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コーヒーの露店が並んでいたという三宮神社=神戸市中央区三宮町2

 「戦前に、屋台で気軽にコーヒーが飲めたのは神戸ぐらい。その気軽さに触れて、経営の道を歩むようになったのでは」と田中さんは推測。二人の間には付き合いもあったという。

 1号店「湊町ホワイト」を開いたのは26年。のれん分けで市内に最大36店舗を展開、大阪にも広がった。

 壁際に小さいテーブルが並び、中央のガラスケースから菓子やパンをセルフで取るスタイルで、コーヒーの値段も他より安かった。

 市内では宇治川や東山に数店舗が健在だ。

 田中さんは「今のフランチャイズの喫茶店のはしりといえる。神戸の喫茶文化を語る上で、もっと推されていい」と力を込める。

 スタバやコンビニのカフェラテもいいけど、下町の喫茶店で飲むミーコもまた格別。どちらも白黒つけがたい。(小谷千穂)