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経済小説の迫真 同時代の光と影

<経済小説の迫真 同時代の光と影>(6)高杉良著「破天荒」 青年記者から作家へ自伝的作品

2023.10.18
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「労働貴族」を書いた頃。「(業界紙記者と作家の)二足のわらじを履いた分、集中して仕事をしていました」=1983年、東京都世田谷区(本人提供)

「労働貴族」を書いた頃。「(業界紙記者と作家の)二足のわらじを履いた分、集中して仕事をしていました」=1983年、東京都世田谷区(本人提供)

 80に及ぶ作品を世に出し、経済小説の巨匠と称される高杉良(84)。19歳で業界紙・石油化学新聞の記者として企業社会の現場に飛び込み、取材力を磨いた。76年の「虚構の城」でのデビュー以降、「大逆転!」「生命燃ゆ」「大脱走」「広報室沈黙す」「炎の経営者」など苦難に際して前向きに闘う男たちを描いた名品を次々と刊行した。成長と繁栄、その負の側面も含め、昭和のダイナミズムをつかんだ高杉だが、その真骨頂は時代の転換点となった平成の経済社会の潮流変化を察知し、代表作「金融腐蝕(ふしょく)列島」に結実させたことにある。

 「破天荒」は「自伝的経済小説」と帯にあるとおり、青年記者から作家へテイクオフする日々が生き生きと描かれる。「僕は恐怖心より好奇心が強いからね」「三度の飯より取材が好き」「取材が7で執筆が3。書き始めた段階でもう7割が済んでいる」。今回、本作品を通読して、泉のごとく言葉を紡ぎ出せるのは天性の資質を開花させた記者時代の経験が大きいと感じた。

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