経済小説の迫真 同時代の光と影
<経済小説の迫真 同時代の光と影>(12)山崎豊子著「華麗なる一族」 銀行合併、渦巻く野望と人間の業
刊行から半世紀をへても深い陰影をもって読み手に迫ってくる。銀行合併を巡る頭取、政治家、大蔵(現財務)官僚の思惑と野望、閨閥(けいばつ)でつながる家族の葛藤、愛憎…。人間のすさまじい業を金融という奥の院を軸に描き切った山崎豊子の筆力のなせる業というほかないが、舞台に設定した神戸の雰囲気がリアリティーを一段と高めている。
神戸に本店を置く都銀10位の阪神銀行のオーナー頭取、万俵大介は、日銀系で同8位の大同銀行と合併するためにあらゆる策謀を巡らせる。
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