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 米国などによるイラン攻撃の長期化で石油由来のナフサが不足し、経済活動に悪影響を及ぼしている。資材の入手困難や価格高騰などで産業界からは「新型コロナウイルス禍より厳しい」との声も上がる。

 政府の認識は異なる。高市早苗首相は4月初め、ナフサについて「少なくとも国内需要の4カ月分を確保した」と表明し、その後、米国などからの輸入増にめどがついたとして「年明け以降も確保できる」と述べた。総量は足りており、混乱は「流通の目詰まり」、必要以上の発注や在庫積み増しが要因との見方だ。

 2024年の「令和のコメ騒動」を思わせる。政府は「コメは足りている」「流通の目詰まり」と主張した。今回も「足りている」で済ませず、混乱を直視する必要がある。

 4月の貿易統計によると、ナフサの輸入量は前年同月と比べほぼ半減した。主力の中東からの輸入が8割近く落ち込んだ。政府は、中東以外からの輸入が5月にはイラン攻撃前の3倍に伸びると説明したが、現状はどうなっているのか。

 ナフサはポリエチレンや合成ゴムといった中間製品に加工され、プラスチックや合成繊維、塗料などの原料となる。政府は「足りている」の根拠として、中間製品の在庫が約1・8カ月分あることも挙げる。だが、中間製品の生産も減っており、そこまで在庫が持たず、供給が全体的に滞る可能性は否めない。

 政府は事業者の要請を受け、発注先との交渉で「供給の偏り」を是正し、「流通の円滑化」が実現したのは4月末時点で155件だったと説明する。しかし、重要なのは供給不安そのものの解消だ。

 5月12日、カルビーがインキ不足に伴いポテトチップスの包装を白黒にすると発表したことで、国民にも事態の深刻さが改めて伝わった。発表直後の共同通信による世論調査では、政府が資源節約などを「呼びかけるべきだ」が70%に達した。中東情勢の先行きは見通せず、生活不安が現実味を帯びていることの表れと言える。

 首相は5月25日の会見でも、原油やナフサは足りており、「節約をお願いする状況ではない」と繰り返した。「強い経済」を掲げる政権として、個人消費の減退で景気悪化を招きたくないのだろう。

 政府は生活実感に寄り添い、ナフサ確保の見通しを具体的な根拠とともに示さねばならない。不足の影響は医療現場の注射器やカテーテル、点滴バッグなどにまで及んでいる。命に関わる分野を優先し、ほかでは節約を呼びかける。それは首相が唱える「国民の命を守り抜く」政治に直結する。