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M's KOBE

海と山に囲まれた港都・神戸。明治期の開港をきっかけに、映画やジャズ、ファッションなど西洋文化をいち早く取り入れ、モダンでハイカラな街として発展してきました。

神戸新聞では2018年7月から市内9区をひと月ずつ訪ね歩く「マンスリー特集」をスタート。これまで紙面掲載された記事を集めました。神戸らしさを象徴する「海(Marine)」「山(Mountain)」「音楽(Music)」「神戸牛(Meat)」「出会い(Meet)」、そして「マンスリー(Monthly)」の頭文字「M」をあしらった、その名も「M's KOBE」。

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スイーツ激戦区の神戸・岡本 その理由は港町・神戸にあり 2019/02/26

記事

 皆さんお気づきでしょうか。東灘マンスリーの隠れた(?)名コーナーの存在を! 神戸市東灘区内のカフェやスイーツ店の協力の下、各店おすすめの1品を紹介する「スイーツ図鑑」。阪急岡本駅から徒歩5分ほどに、把握するだけでも36店舗が看板を上げる。もしかして、古くから「高級住宅地」として名をはせる岡本の歴史と関係するのだろうか? 甘い物好きの私たちが“スイーツ激戦区”の謎に迫った。(久保田麻依子、篠原拓真)

 ■おしゃれな街並みが決め手

 阪急岡本駅(東灘区岡本5)を南下すると、石畳のゆるい坂道にはカフェやベーカリー。どこに入ろうかと思わず心が躍る。岡本は住宅メーカーが発表する「関西の住みたい町ランキング」で毎年トップテンに入る人気地域。道歩く人もおしゃれな女子大生が目立ち、街に華やかさが際立つ。

 駅から徒歩5分ほどにある「日本茶カフェ 一日」を訪ねた。2005年にオープンし、日本茶に合うスイーツを提供。季節の果物などを使った創作かき氷は冬でも人気だ。

 「候補は岡本しかなかった」。阪神間で生まれ育った店主の遠城靖さん(64)。脱サラしカフェを開く際「落ち着いた雰囲気で、おしゃれな街並みが気に入った」と出店を決意。読みは当たり、女性グループやかき氷好きから支持され、岡本ではすっかり“老舗”として定着した。

 ■ティータイム文化が浸透

 なぜ、岡本にスイーツ店が多いのか。それは港町・神戸と深い関わりがある。

 甲南大経営学部の西村順二教授によると、神戸は1868年の開港以来、西洋から来た外国人の「ティータイム文化」が浸透。住吉や岡本は、商売で成功した大阪などの富裕層が住宅を構えたこともあり「新しい文化を取り入れる雰囲気が生まれた」と指摘する。

 西村教授の調べでは、人口1万人当たりの製造小売りの洋菓子店(10年)は、中央区では2・3軒に対して東灘区は1・7軒と、その多さが垣間見える。さらに阪急岡本駅とJR摂津本山駅間のアクセスの良さや、両駅が最寄りの大学が3校ある「学生の街」というにぎわいの相乗効果が功を奏しているとみられる。

 ■安すぎると売れない

 岡本商店街振興組合の松田朗理事長(58)は「『阪神間の山の手にある高級街』というイメージから、店名に岡本本店と付けたいと相談を受けることも多い」と打ち明ける。

 取材班が調べたところ、店名に岡本の名を入れたり、「岡本本店」としたりする洋菓子店やカフェは6店。行政などが毎年秋に企画する「ひがしなだスイーツめぐり」も好評で、岡本での新規出店を希望する声も絶えない。「店の集まる=需要がある」と捉え、「さらに店を呼ぶような構図になっている」という。

 岡本という人気の地。駅近のテナントは賃料が高く、結果として商品も割高にならざるを得ない。甲南大学に通い、カフェなどをよく巡ったという男性(26)も「地方から出てきた当初はお高い場所に来たなと思った」と笑う。

 「(他地域より)価格帯が高めの店が多く、高級街というイメージからか安すぎると逆に売れない」と松田さん。「学生街だからと学生だけをターゲットにすると、つぶれることも多く、実際に店の入れ替わりも激しい」と話す。

 おしゃれな町のスイーツ激戦区。お店を続けるには、甘くない努力と苦労があるようだ…。さて、新たな発見を求め、次はどのスイーツ店に入ろうか。