立志編
米穀店いづよね(5)原点回帰 安売り合戦脱却へ商機探る
化膿(かのう)性脊椎炎からの奇跡的な回復で、退院2週間後の5月末に仕事に復帰した。いづよねの川崎恭雄(やすお)は「コメで命を助けてもらった恩返しをしなければ」と思った。
同社は阪神・淡路大震災で失った顧客を取り戻すため、事業の柱を酒類の安売りに据えていた。コメは酒をたくさん売るための「抱き合わせ商材」に堕していた。1ケース4千円のビールを、コメと一緒に買えば3800円に割り引く。ビールで採算割れしてもコメを含めた全体で利益を確保する商いを続けていた。「コメに思いを入れていなかった。大病は、創業者の曽祖父が僕に与えた罰だったと思う」と述懐する。震災後の同社を支えた酒販は出店規制の緩和で落ち込んでおり「業績はどん底だった」。果てのない安売り合戦から脱却するためにも「コメを誠実に売らなければ」と決意した。
この記事は会員限定です。新聞購読者は会員登録だけで続きをお読みいただけます。