ひょうご経済プラスTOP 連載一覧 中小企業 前へ 第二創業編 配管工事会社 関西工事(1)温める 異分野進出サロン経営へ

第二創業編

配管工事会社 関西工事(1)温める 異分野進出サロン経営へ

2018.04.20
  • 印刷
配管敷設の技術力を生かして開発した温浴機について話す関西工事の久木元悦子代表取締役=尼崎市杭瀬本町1(撮影・後藤亮平)

配管敷設の技術力を生かして開発した温浴機について話す関西工事の久木元悦子代表取締役=尼崎市杭瀬本町1(撮影・後藤亮平)

 尼崎市の阪神電鉄杭瀬駅から北へ5分ほど歩くと、昭和初期に起こったという杭瀬市場がある。昔ながらの洋服店や茶舗が立ち並ぶ一角を抜け、市場内の四つつじを折れた先に、「ぬくもりサロン ルルド」の看板が見えてくる。

 引き戸の向こうから、せせらぎが聞こえてきた。中央にステンレス製の温水槽が鎮座し、それは上下に分かれて手と足が漬けられる構造になっている。42度に保たれた湯がポンプで環流しており、常連とみられる女性客が汗だくになって四肢を浸していた。

 配管工事会社、関西工事(同市)の代表取締役を務める久木元悦子(66)が2012年7月にサロンを開いた。幼少の頃に患った股関節脱臼や20代に遭った交通事故などが原因で、偏頭痛や肩こりなどに長年悩まされてきた。「昔から『冷えは万病のもと』といわれる。体を温めれば、血液の循環が良くなって、体質が改善される」。本業の合間に、サロンで自ら接客もする久木元は力を込めた。

 人間の血管の総延長は、地球の2周半に当たる10万キロメートル。このうち毛細血管は91%で、その7割が両手両足に集中しているという。「末梢血管を温めて効率的に発汗を促し、体にたまった老廃物を出す。血行も良くなるので酸素や栄養素が全身に巡りやすく、新陳代謝も活発になる」と語る。

   □    □

 温浴は20分1500円。サロンが用意する専用の温浴着を羽織り、槽に手足を漬けると、3分ほどで額や首筋が湿ってくる。脱水症状を防ぐためのさゆを口に含むとすぐに、脳天から汗がしたたり落ちてきた。タイマーが鳴る頃には、全身がびっしょり。不思議なことに、汗は目に入っても染みないし、しょっぱくない。「それは、脳が暑いと認識していないから」と解説してくれた。

 久木元によると、サウナでは脳が暑いと認識して強制的に体内温度を調整しようとする。その際に出た汗は塩分とミネラルを含み、目に入ると痛く、体にべたつく。手足温浴では脳を刺激しておらず、汗に塩分とミネラルを含まないから、体もべたつかないという。「手足温浴の汗は、天然の化粧水」と笑顔を見せた。

 「若い人の平熱が低くなっている」と久木元は心配する。便利な生活による運動不足などが原因だ。体温を生む筋肉をさほど動かさなくても済み、快適な空調のおかげで、冷えた清涼飲料水や酒類を年中楽しめる。冬場のアイスクリームにも違和感がなくなった。湯船に浸からず、シャワーだけで済ます生活スタイルも低体温の要因とみる。「血行が悪くなり、内臓の働きが落ちて免疫力も低下する」と警鐘を鳴らした。

   □    □

 同社は薬品、食品などの生産現場に使われる配管の敷設を手掛ける。久木元の夫である明(72)が1970年に創業した。腕利きの溶接職人で鳴らし、高度経済成長の波にも乗って、工場の新増設やビルの建設に伴う配管工事を数多く手掛けてきた。94年に個人事業から株式会社に改組した際に、妻の久木元が代表取締役に就いた。

 配管工事会社のトップが温浴サロンを手掛けるようになったのは、自身の体調不良だった。97年を締めくくる家族旅行が転機となった。血行障害が原因で突然歩けなくなったのである。=敬称略=(大久保斉)

社 名 関西工事

代表者 久木元悦子

創 業 1970年(設立1994年)

資本金 1000万円

従業員 15人

売上高 5億円(2017年10月期)

所在地 尼崎市東初島町2の40

連絡先 TEL06・6487・2822