学生が聞く ひょうご企業研究
(10)菊正宗酒造(神戸市東灘区) 嘉納治郎右衛門社長(43)
360年にわたる歴史を持つ老舗酒造会社。伝統の製法にこだわった辛口の日本酒は、飲食店などプロからも信頼が厚い。2016年には、130年ぶりとなる新ブランド「百黙(ひゃくもく)」を発売した。関西学院大の安熙錫教授のゼミ生が嘉納治郎右衛門(じろえもん)社長を訪ねた。
-酒づくりの特徴は。
「アルコールをつくる酵母を育てる『●(もと)』を、水と米と米こうじから手作業でつくる『生(き)●づくり』です。通常の倍以上の手間と時間がかかりますが、昔ながらの製法で、すっきりとキレのある辛口の酒を提供しています。高級品だけでなく、9年前から定番の商品にも導入しました」
-新ブランドが話題だ。
「菊正宗は和食を引き立たせる辛口で、日本酒の王道といえます。これに対し二つ目のブランド、百黙はクリアで透明感があり、フランス料理やイタリア料理にもよく合います。反響は大きいですよ。兵庫県内での限定販売ですが、来秋には東京などに地域を拡大したいと思っています」
-清酒の輸出が好調だ。
「菊正宗は、アジアや米国など27カ国・地域に輸出しています。売上高の4%ほどですが、毎年2桁増で、昨年度は30%増えました。百黙は今年9月のフランス・パリを皮切りに、米国やシンガポールへも輸出します。海外では日本食や日本酒への関心が高まっており、百黙は菊正宗の新しい顔として認知してもらえるでしょう」
-今後の取り組みは。
「伝統的な製法へのこだわりもあり、当社は業務用のシェアが高いんです。プロに支持される酒づくりをさらに発展させ若い人にも飲んでもらいたいですね」
-求める人材は。
「失敗を恐れず、新しい視点や方法に挑戦できる人にぜひ来てほしいです」(まとめ・塩津あかね)
(注)●は「酉」の右に「元」
〈メモ〉1659年、神戸・御影で創業。社員数250人。2018年3月期の売上高は110億2000万円。18年春の採用は6人、19年春は2人を予定。神戸市東灘区御影本町1の7の15。TEL078・851・0001
=おわり=