カイシャの顔
(8)マンダム ブロンソンではありません 男くささ前面、ヒット商品に

【使用開始】1970(昭和45)年7月【特徴】ノルウェーのフログネル公園にある鉄格子の扉に刻まれた男性の顔がモデル。人間愛をうたっている作品で、人間的な愛情で支えられる男の世界を表現するのにふさわしいと採用された。
「う~ん、マンダム」。往年のスター、チャールズ・ブロンソンがつぶやくテレビCMは、強烈な印象を残した。化粧品メーカーのマンダム(大阪市)が1970年に発売した男性用のマンダムシリーズは、CMの効果もあって大ヒット。商品に付けた彫りの深い男性の顔は「ブロンソンがモデルでは」とうわさされたという。
実は、このロゴマークは、ノルウェーの彫刻公園にある鉄格子の扉に刻まれた顔から取ったものだという。同社の担当者は「CMの印象が強かったので、ブロンソンだと思われたのでは」と推測する。
当時の社名は、33年に発売した固形の整髪料「丹頂チック」から取った「丹頂」。国内外で人気が出て、一斉を風靡(ふうび)した。ところが60年代、男性化粧品の市場では、液体整髪料が主流に。若者からはクリーム状の「ポマード」などが主体の古くさい企業と捉えられ、経営危機に陥ってしまう。起死回生を図るため、社運をかけて発売したのが同シリーズだった。
商品は整髪料のほか、化粧水など10品目。男くささを前面に出し、テーマはなんと「男の体臭」。体臭を消すことに躍起になる今どきの若者が聞いたら、ひっくり返りそうなコンセプトだ。
CMソングもヒットし、シングルの売り上げは100万枚以上を記録した。このブームを一時的な流行に終わらせるのではなく、企業のイメージとして定着させるため、71年には社名を「マンダム」に変更した。ロゴも企業ロゴとして他商品にも使い始めた。
今もヘアトニックなど3商品が、福崎工場(兵庫県福崎町)で生産されている。そこには、あの顔のマークも。丹頂チックも、米国の有名スタイリストが愛用していると、最近、交流サイト(SNS)で話題になったという。
マンダムはその後、83年に新マークを導入。さらに昨年9月には38年ぶりにシンボルマークを刷新した。新しいマークは笑顔と社名の頭文字を表し、人という文字が並んだようにも見える。こんなしゃれたマークに変わるとは、当時のロゴからは想像もつかない。(塩津あかね)
【マンダム(大阪市)】1927(昭和2)年、金鶴香水として創業。「ギャツビー」「ルシード」の二大ブランドを持ち、男性化粧品では国内トップ級。女性化粧品は同社の売上高の約3割を占める。2022年3月期の連結売上高は573億6100万円。グループ社員は22年3月末時点で2763人。福崎工場は国内で唯一の生産拠点。