カイシャの顔
(11)曲田商店 艶っぽい三人娘今や4代目 K~Y~K~ふ~ん
周囲の30代以上の関西人に聞けば、認知度はほぼ百パーセントではないだろうか。曲田(まがた)商店(大阪市阿倍野区)が展開するとんかつ店「とんかつKYK」のCMだ。
昭和を感じさせる髪形や服装の女性3人が順番に「ケ~」「ワ~イ」「ケ~」。そして、艶っぽく声をそろえておいしさを伝える「ふ~ん」。最後は「とんかつとんかつKYK」とたたみかけるあれだ。
この三人娘編は1980年にスタート。90年代には女性が「K」「Y」「K」と人文字をつくる新三人娘編に進化。05年まで放送されたという。同社営業部、竹丸泰正さん(47)によると、残念ながら当時のCM制作会社が廃業しており、メロディー制作や三人娘起用の経緯は不明。だが、他の情報を教えてくれた。
三人娘編の前にもCMはあり、アニメキャラが威勢良く「んー、かつぅー!」と叫ぶ場面から始まるものがあった。また関西国際空港開港の1994年には外国の少女を起用したCMを一時放送したが、その時「三人娘はどうなるのか」と心配の声が寄せられた-。
その後、三人娘の3代目は跳馬を飛んで「KYK」の人文字をつくる「跳馬編」となったが、今春にさらに一新した。同社肝いりの「黒豚とんかつ編」。曲田陽一専務(49)は「黒豚を何食限定と制限を付けず、リーズナブルに提供できるのはKYKの強み。KYK=黒豚というイメージを根付かせたい」。もちろん、人文字もメロディーもあのままだ。
ところでなぜKYKなのだろう。聞けば創業時に土地を譲ってくれた「瓦町洋裁研究所」から取ったという。ちなみに、とんかつKYKは65年、神戸で産声を上げた。三宮の地下街「さんちか」の店舗が1号店だ。曲田専務によると、それまでとんかつ店とは無縁だったが他の出店者との兼ね合いで偶然決まったという。それが好評で別形態だった地元・阿倍野の店もとんかつ店に変えた。今や店舗は18店で持ち帰り専門店(デリカKYK)もある。1号店から広がった「ふ~ん」が、KYKの今をつくった?(大盛周平)
【名称】黒豚とんかつ編
【誕生】2022年春
【経緯】新型コロナウイルス禍を経て、原点に立ち返って一番の武器、黒豚を押し出そうと制作。ただ、なじみの音楽やフレーズは「耳に残るもの。絶対入れる」(担当者)。
【特徴】冒頭から三人娘が登場する初代、2代目と違い、とんかつが揚がった場面でスタート。4代目三人娘が人文字ポーズとともに「黒豚サイコー」とPRする。懐かしのCMは同社HP(https://www.tonkatu-kyk.co.jp/movie/)にて公開中。
【曲田商店(大阪市)】1946年、曲田陽一専務の祖父甚太郎さんが喫茶店として創業。52年、曲田商店設立。KYKには「Keep You Kindly(キープ ユー カインドリー)」として「心と味でおもてなし」という意味も込める。他にカレーハウス「サンマルコ」なども展開。資本金5千万円。従業員(パート・アルバイト含む)は704人(2022年4月現在)。