カイシャの顔
(13)グローリー 自慢の「見分ける技術」擬人化 その名はMr.グローリー
2022年の年明け。東京のJR品川駅にある通路の両側に並ぶデジタルサイネージ(電子看板)に、青い帽子、青いスーツの金髪の少年がずらりと映し出された。
名前は「Mr.グローリー」。貨幣処理機大手グローリー(姫路市)が20年から放映するCMに出演している米国人の子役だ。きりっとした顔立ちと笑顔のかわいさで、約50人が参加したオーディションを勝ち抜いた。
当時6歳。日本語は話せず、「初めまして、じゃないんです。実はあなたとは、何度もお会いしているんです」のナレーションに合わせ、愛らしい笑顔を振りまく。
紹介するのは、スーパーのレジなどでおなじみの通貨を識別する技術と、決済や入退室の際に使われる顔認証技術。「当社の見分ける技術を擬人化した」と広報担当の小田裕之さんが説明する。
外国の少年を起用したのは、海外売上高が伸び、グローバル企業に成長したからだ。小田さんは「今後は海外でも、もっとお会いできるとの意味を込めた」と話す。
実はMr.グローリーは2代目。初代は18年から放映した創業100周年記念CMで、日本の人気俳優が務めた。ジュール・ベルヌの冒険小説が原作の映画「八十日間世界一周」のテーマ曲にのせ、紙幣に登場する偉人らが踊る中、「グローリー、グローリー、グローリー」などの歌詞に合わせて偽物を見破るストーリーだ。
同社は通貨処理機の世界トップメーカーだが、BtoB(企業間取引)が主体のため、認知度アップが課題。小田さんは「人気の俳優さんに、社名を連呼して覚えてもらう狙いがあった」と明かす。
この記念CMは年末年始に放映し、帰省中の就活生と親に浸透させた。公式ユーチューブで約175万回再生され、採用面接でもCMを見た学生が多かったという。
同社は1990年にも全国CMを展開。ミクロネシアのヤップ島で撮影し、巨大石貨と対比させて自社製プリペイドカードの認知度を高め、累計21億枚を売った。
23年が始まった。2代目Mr.グローリーはさらなる成長を引き寄せられるか。
【名称】「Mr.グローリー、現る」篇
【誕生】2020年
【特徴】青い立方体が浮かぶ白い空間で、Mr.グローリーが指し示すと、立方体が開き、グローリーの技術が相次いで現れる。眼鏡に手をやり「見分けるチカラで、未来を守る」のナレーションで締めくくる。出演者本人は英語でせりふをしゃべっているが、CMでは日本語の吹き替えが流れる。ユーチューブ「グローリー公式チャンネル」などで視聴できる。
【グローリー(姫路市)】1918年、国栄機械製作所として創業。50年に国産初の硬貨計数機を開発後、硬貨自動包装機や千円紙幣両替機、たばこ販売機などの国産第1号を生み出した。2006年、現社名に。連結売上高2265億円(22年3月期)。初めて海外売上高が国内を上回った。100カ国以上で事業を展開し、2900種類以上の通貨を識別。従業員数約1万1千人。