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カイシャの顔

(17)加美乃素本舗 世界の街角で商品アピール 髪への慈しみは万国共通

2023.04.05
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「見知らぬ街角」の歌とともに流れるCMの一場面。海外旅行が本格化する時代にあってヨーロッパの日常の景色が斬新だった(加美乃素本舗提供)

「見知らぬ街角」の歌とともに流れるCMの一場面。海外旅行が本格化する時代にあってヨーロッパの日常の景色が斬新だった(加美乃素本舗提供)

世界戦略を示すコピー(加美乃素本舗提供)

世界戦略を示すコピー(加美乃素本舗提供)

「CMが親しまれているのはうれしい」と話す副社長の中村翔さん=神戸市中央区熊内橋通3

「CMが親しまれているのはうれしい」と話す副社長の中村翔さん=神戸市中央区熊内橋通3

 喜びに満ちたストレートな歌詞にしびれる。♪そうさ そうだよ 世界はともだち そうさ そうだよ 加美乃素A~。

 軽快なアップテンポな歌とともに流れる異国の映像がまた新鮮だった。クローズアップされるヨーロッパの街角。ハトが舞う広場で若い女性が微笑み、かわいい子どもが手を伸ばす。花に水をやる女性の仕草も至って自然だ。最後は青い地球と商品が映って「世界に伸びる 加美乃素」。

 なぜ育毛剤メーカーが国際的なイメージなのだろう。神戸・熊内(くもち)の加美乃素本舗を訪ねた。濃い緑色に塗られた社屋の屋上には商品名を記した大看板が立つ。「あのCMソングは『見知らぬ街角』といいます」。副社長の中村翔(しょう)さん(38)が教えてくれた。

 仕掛けたのは先代社長の宮崎幸三(故人)さんだ。経営を一新し、今に至る成長の礎を築いた中興の祖だ。時は1950年代後半以降。輸出先は香港、シンガポール、イタリア、ベトナム、スイス、デンマーク…。現地生産もイタリア、フィンランド、南アフリカへと広げた。「人々の髪への慈しみは世界共通。世界の街角にある商品をアピールしています」

 創業は明治後期。チンドン屋による紙おしろいの宣伝に始まり、32(昭和7)年、看板商品「加美乃素」の製造以降、戦略が強化された。神戸空襲で工場倉庫ともに全焼したが、復活を遂げ、59年に全国ネット「加美乃素日曜劇場」の放映開始。同年には国内初という液体整髪料「ポマドール」が「爆発的な人気を博した」。高倉健さん、小川ローザさん、大地真央さん…。起用されてきたスターもまさにきら星のごとくだ。

 昔懐かしい音源を聴かせてもらった。緑の髪を重ねたのだろう。題は「緑の小箱」。作詞はCMソング界の草分け三木鶏郎さん。歌はNHKラジオ「うたのおばさん」の安西愛子さん。〈おしろいつけて紅つけて/みんなそろって黒い髪/緑の小箱は/加美乃素〉

 緑なす六甲の裾野で生まれたロングセラーの生命力を感じた。(加藤正文)

【名称】見知らぬ街角

【誕生】昭和50年代。近年まで一部ローカル局で放映されていた

【経緯】海外展開に合わせて世界の街角で「加美乃素」が親しまれている様子をアピール

【特徴】海外ロケで制作。ヨーロッパ編、東南アジア編、ハワイ編がある。作詞は坂根幹人さん、作曲は津野こうじさん。ほかに坂根さん作詞、津野さん作曲、黒沢裕一さん歌の「サヨナラはよさないか」も味わい深い

【加美乃素本舗(神戸市中央区)】1908(明治41)年創業で紙おしろいを扱っていた。看板商品「加美乃素」の製造販売は32(昭和7)年。世界40カ国以上で販売されているという。製品構成は頭髪化粧品80%、基礎化粧品その他20%。資本金1億円。従業員134人。代表取締役は中村範平(のりひら)氏。