社会人アスリートが地域で奮闘している。淡路島(兵庫県)を拠点にするサッカーのクラブチームFC.AWJと女子硬式野球の淡路ブレイブオーシャンズは、それぞれ設立5年目と3年目。選手の多くが島外から移り住んで働きながら、高みを目指す。島内の企業が支える新たな動きも出ており、現場を訪ねた。(吉田みなみ)
■サッカー、女子硬式野球…住民と積極交流、企業も活動支援
同県洲本市五色町の運動公園アスパ五色。整然とした人工芝のグラウンドをAWJの選手が練習で走り回る。2018年発足のFC淡路島から今春、チーム名を変えて再編成した。所属選手25人のうち19人が新加入で、大阪などから洲本市へ移住した。平日の午前中に練習し、午後は企業や病院での勤務、学校の部活動の外部コーチなど、おのおのの仕事に向かう。
同県南あわじ市にある食品製造設備メーカー・イズミフードマシナリ(同県尼崎市)の工場では、AWJの選手2人がアルバイトとして事務や荷造りを担う。
月に数回、勤務時間後に社内食堂で社員向けのトレーニング講座を開き、体幹強化や肩こり解消につながると好評という。同社の採用担当者は、「会社が働く場を提供して貢献する。社員が仲良くなって試合の応援に行く。良い作用が生まれている」と話す。
淡路島へ本社機能移転を進めるパソナグループは、契約社員「アスリート社員」の採用を始めた。競技活動と仕事の両立、現役引退後のセカンドキャリア形成を支援するとする。
AWJの寺田優作選手(26)は、同県淡路市野島にあるパソナの観光施設「クラフトサーカス」で、野菜の仕入れ先の開拓などに従事している。広報や組織運営を学び、「サッカーしかしてこなかった。仕事をしながら多様な経験を積めている。将来はサッカー教室を開きたい」と話す。
一方のブレイブオーシャンズ。田中朋子監督(31)は、「女子野球は男子に比べて圧倒的にマイナーだが、競技人口は増えている」と現状を説明する。所属選手は17人。週2回、それぞれの仕事が終わった後の午後7時から練習に励む。
田中監督は、15~17年に淡路市を拠点にした女子プロ球団・兵庫ディオーネの選手だった。クラブチームを率いる立場で島に戻り、淡路市の地域おこし協力隊員となった。昨年11月には、加盟する全日本女子野球連盟(東京)が淡路市と「女子野球タウン協定」を結び、スポーツを生かしたまちづくりの一翼を担う。子ども向けの運動教室などのイベントで地域と連携を深めたいと考えている。
持続的なチーム運営へ、AWJの片山純平代表(30)は、資金やイベントグッズ、職場を提供する「パートナー企業」を現状の約30社から増やそうと島内外で奔走する。選手は地元の祭りへの参加や、あいさつ運動を展開。片山代表は「多くの人や企業に関わってもらい、チームの価値を高めたい」と力を込める。ブレイブオーシャンズの田中監督は「ファンを増やし、女子野球をきっかけに選手や観客が淡路島に集まるようにしたい」と話す。