世界文化遺産・国宝姫路城の三の丸広場(兵庫県姫路市本町)で毎年恒例の薪能が5月20日に開かれるのを前に、主催する姫路薪能奉賛会は三の丸に明治初期まであったとされる能舞台を復元しようと史料や写真を探している。1997年に大分市で見つかった「播州姫路城図」には、三の丸にあった御殿に能舞台とみられる建造物が描かれている。復元には構造が分かる立面図や写真が必要で、同会が情報提供を呼び掛けている。(井上 駿)
姫路城薪能は、若者ら市民に幽玄の世界に触れてもらおうと1971年に始まった。現在は「姫路お城まつり」の一環で開催され、三の丸広場に能舞台を設置して上演してきた。
奉賛会はこれまでも、三の丸にかつてあったとされる能舞台の復元を模索してきた。手がかりが1700年ごろに描かれたとされる「播州姫路城図」などの平面図しかなく、難航している。
三の丸にあった御殿群には公務を行う屋敷のほか、庭園のある向屋敷、千姫が過ごした武蔵野御殿などがあったとされる。市立姫路城郭研究室の工藤茂博学芸員によると、明治初期に旧陸軍の営舎が三の丸にできる過程で建造物の大半が撤去され、立体の図面や写真は現時点で確認されていないという。
同室が、2017年度に復元に結び付く情報提供を募ったこともあったが、有力な手がかりは得られなかったという。23年は姫路城が世界遺産登録から30年となることもあり、奉賛会が資料探しを進めている。
工藤学芸員は「御殿が現存していた時期に撮影された大天守の写真はあり、能舞台の写真や史料が残っている可能性はある」とする。奉賛会の内藤浩一さんは「姫路城の古い写真を持っている人はぜひ確認してほしい。将来的な復元に向けて力を貸してほしい」と呼び掛けている。
情報提供は奉賛会TEL079・281・6800(清交倶楽部)まで。
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第51回となる今年の姫路城薪能は5月20日午後5時45分から開演を予定し、入場無料の一般向けの観覧席も設ける方針としている。
演目は、能が、光源氏と夕顔の恋物語「半蔀(はじとみ)」、化け物退治の「土蜘蛛(つちぐも)」。狂言は、怠け者の夫と口うるさい妻との夫婦げんかをテーマにした「鎌腹」。