兵庫県三田市小野の県道49号沿い。小野公園の前の店先に人だかりのようなものが見えた。気になって近づくと、人気アニメのキャラクターや脚立に縛られた大きなゴーヤー…? そこでは、ひと味違うかかしたちの「総選挙」が開かれていた。
会場は古民家茶屋「花乃舎」と自転車工房ECO(エコー)の前の広場。4年前に大阪府から移住し、それぞれの店を営む唯文砂子さん(51)、夫の陸奥男さん(52)が企画した。
「かかしコンテストin小野」と題して地域住民や店で知り合った仲間らから募り、約30体が集まった。
小野幼稚園の園児たちは人気アニメ「鬼滅の刃」の主人公「竈門炭治郎」を制作。額の傷や、炭治郎がまとう緑と黒の市松模様の羽織も再現した。実際に畑で使われているという、大きな目と口が風で回るかかしや、後ろ脚で直立する猫。孫のために作った衣装の「お下がり」を着た人形もある。
11月15日までの展示期間中、会場に投票箱を設置しており、誰でも自由に投票できる。個性的なデザインに、見に訪れた人たちからは「かかしの概念が変わる」との感想が聞こえた。
唯さん夫妻は大阪で店を構えていた頃、客から三田の物件を譲り受け、移り住んだ。自転車で地域を巡ると、のどかでいい場所だと感じながらも、人の少なさが気にかかった。
これまでも、茶屋の一部を「市民ギャラリー」として、客が集めているフィギュアを並べたり、子どもたちの作品展を開いたりしてきた。もっと住民と一緒に小野を盛り上げたい。模索する中で、地域の人から「やってみたい」と声があったかかしコンテストにたどり着いた。
小野の住民の協力で、出品者全員に三田の新米1キロをプレゼントできるようになった。1、2、3位の人にはそれぞれ10、5、3キロを贈る。
「毎年恒例のイベントとして、いずれは小野全体を会場にしてできたらいいな」と文砂子さん。これからも「小野に来たい」と思ってもらえるような企画を考えたいとしている。(喜田美咲)