三田

  • 印刷
「店内調理の総菜を充実させ地域密着に努めたい」と話す奥村店長=三田市つつじが丘北2
拡大
「店内調理の総菜を充実させ地域密着に努めたい」と話す奥村店長=三田市つつじが丘北2
ひと味違った商品販売で集客を目指すメルカート三田店=三田市つつじが丘北2
拡大
ひと味違った商品販売で集客を目指すメルカート三田店=三田市つつじが丘北2
コストコの商品は瞬く間に完売した=三田市つつじが丘北2
拡大
コストコの商品は瞬く間に完売した=三田市つつじが丘北2
親子連れでにぎわったマグロの解体ショー(提供)
拡大
親子連れでにぎわったマグロの解体ショー(提供)

 1988年に入居が始まった兵庫県三田市つつじが丘地区のニュータウン。2年後、中心部にできた「メルカート三田店」(同市つつじが丘北2)は当初、地区内唯一のスーパーとしてにぎわった。しかし高齢化や人口減、近隣ニュータウンでの大型商業施設出店に伴い客足は年々減少。高齢者のライフラインとしても存続が望まれる中、昨年運営を引き継いだ企業が生き残りをかけ、ひと味違う方法で売り出し始めた。(喜田美咲)

15分足らずで売り切れ

 10月のある土曜日。15台分ほどの駐車場にトラックが止まった。「出張マグロ解体ショー」と書かれたウイングが跳ね上がると、荷台にキッチンが登場。黒潮市場(和歌山市)から届いた新鮮なマグロが豪快にさばかれていく。見物客が集まり、店内でマグロの刺し身やにぎりずしを手に取った。

 別の土曜日には、36個入りのロールパンや30ロール入りのトイレットペーパーの前に人だかりができた。大容量が人気の米会員制量販店「コストコホールセールジャパン」の商品を販売すると、開始から15分足らずで売り切れた。

 メルカート三田店は90年、つつじが丘地区を開発した不動産会社「大倉」(大阪市)によってつくられた。メルカートはイタリア語で「市場」を意味する。売り場面積は約400平方メートルと決して広くはないが、肉や魚、野菜が並び、自転車や徒歩での買い物客が集まった。

 「小学生の頃、親と行ったメルカートはにぎわっていました」。同地区で育った奥村将人店長(35)は振り返る。当時つつじが丘小学校(同市つつじが丘南3)には1300人超の児童がいたが、現在は7分の1ほどに減少している。

 店に残る記録で最も古い2004年の売り上げは約2億8千万円。昨年はその半分以下だった。同世代の多くが就職でふるさとを離れた。子育てを終えた親世代が高齢になるにつれ、食品の購入量は減る。車で行ける距離に競合店が増えた。原因はいくつも考えられた。

独自路線を追求

 21年2月、水産加工食品の卸を手がける「淡味(たんみ)」(兵庫県淡路市)に運営が移った。淡味は大倉が展開するホテルへ水産物を卸していた。淡路島などの特産品を扱うアンテナショップやハンバーグ店を運営していたこともあり、大倉が経営の立て直しを打診した。奥村さんを含む社員、パート従業員らは所属を淡味に移し、営業を続けた。

 淡味小売本部の石橋由起男本部長(66)は「アンテナショップと違って日持ちの短い『デーリー販売』の業態は初めてで、手探りだった」としつつも、欠品の棚をなくすことや賞味期限が近づいた商品を手前に並べるなど、基本的な部分から改善を始めた。1年続けたが売り上げ減に歯止めはかからず、次の手を考えた。

 つつじが丘だけでなく、三田駅や新三田駅周辺からも客が来るよう販路を広げる。大型量販店と価格競争するのではなく、「おもしろそうだから行ってみよう」という来店動機をつくる。アンテナショップの経営で培った地方とのつながりを生かして珍しい商品を置き、催事を開くことにした。

 めんたいこやからしれんこんを売る「九州フェア」。北海道や北陸など日替わりで各地の味覚が楽しめる「駅弁空弁大会」。売り場の都合で数は出せないものの、種類は豊富に取り寄せた。飛び込み営業の力を生かし、百貨店で人気のとんかつ店「まい泉」のカツサンド販売などにこぎ着けた。

 10月にあったコストコ商品の販売は、初回でもあり仕入れの種類や数を抑えたが、完売のスピードに手応えを感じた。コストコの店舗より値段は少し上がるものの、会員にならずとも近場で商品を試せる点が購買につながったと分析する。「店の雰囲気はいい方に変わってきた」と石橋さん。マグロの解体ショーなどもあった10月の売り上げは前年比8%増。従来売ってきた商品との相乗効果がなかったことは課題だが「店の中を知ってもらうきっかけになった」。地区内の若い世代にも来てもらえるようインスタグラムなど交流サイト(SNS)での発信も探る。

地域のホットスポット

 一方でここでしか買い物ができない人もいる。お年寄りが「今日食べるご飯」を買いに来る場所でもあるため、4年前からは総菜の店内調理を続けている。人気はカツ丼やカレー。酒類を販売するコーナーの近くには揚げ物といったつまみを置いた。来店頻度を上げてもらえるようバリエーションを増やす予定だ。

 従業員のほとんどが周辺に住む主婦。「野菜を買っても使い切れない」。地域の声を直で受け取り反映することができる。パート歴約20年で自身も常連だという女性(58)は「お菓子を買いに行くだけでもここに来たら誰かに会えるという地域のホットスポットでもある」という。奥村さんは「お客様からも『店長』と声をかけられ、頼りにされていると感じる。なくてはならない場所として再起させたい」と話す。

 次回のコストコ商品販売は11月26日、マグロ解体ショーは12月25日を予定している。メルカート三田店TEL079・568・0840

三田
三田の最新
もっと見る
 

天気(9月6日)

  • 34℃
  • ---℃
  • 0%

  • 35℃
  • ---℃
  • 0%

  • 35℃
  • ---℃
  • 0%

  • 37℃
  • ---℃
  • 0%

お知らせ