今回の衆院選には、新しい政党が候補者を擁立しました。東京都の小池百合子知事が立ち上げた国政新党「希望の党」や元官房長官の枝野幸男氏が代表の「立憲民主党」といった新党がどれくらい議席を獲得するのかが注目されています。(段 貴則)
-これまでの新党って、どんな党があったの?
「年配の人たちは『新自由クラブ』を思い出すだろうね。田中角栄元首相が逮捕、起訴されたロッキード事件を批判し、1976年、自民党を離党した河野洋平氏ら国会議員6人が結成した。直後の衆院選で新風を巻き起こし、17議席を獲得。平成に入ってからなら『日本新党』だろうね。熊本県知事を務めた細川護煕氏が代表となって参院選に挑んだ。このとき、小池氏も日本新党から立候補し初当選したんだ。衆院選でも議席を得て、政界で影響力を持つようになったね」
「同じころに新党が次々とできて非自民勢力が集まり、日本新党の結党翌年、93年8月には自民党を下野に追い込み、細川連立政権が誕生したよ」
解散が引き金
-たくさん新党ができたんだね。
「そうだね。例えば、日本新党が誕生する前には、88年のリクルート事件、92年の佐川急便事件など、政治とカネをめぐる事件が続き、国民の不満、不信感が高まっていたんだ。既存の政党に嫌気がさし、新しい顔ぶれ、新しい政党が期待の受け皿となった」
「今回は『安倍1強体制』と呼ばれる政治状況の中で、森友、加計(かけ)学園の問題が表面化し、安倍首相の説明姿勢に加え、自民党の対応、与党系議員や官僚の『忖度(そんたく)』に批判が高まった。野党第1党の民進党は、代表の辞任やスキャンダル、離党が相次いだ。そこに出てきたのが希望。その余波で立憲民主も誕生。民進は事実上解党に追い込まれた。安倍首相が総選挙に打って出たことが結果的に引き金となって、政界の構図が大きく変わりそうだ」
-急に政党のリーダーになれる人って、たくさんいるんだね。
「例えば、2010年に旧大阪維新の会を立ち上げた橋下徹氏は、弁護士、タレント活動を経て大阪府知事の当選からわずか2年。ただ、それまで全く政治と関わりのない人が選挙に出て当選し、早々に党首まで務めるのは相当難しい。実質的には他の政党に所属していた政治家が党を立ち上げることが多いね」
年末の風物詩
-解党した党も多いね。
「新党をつくりさえすれば、簡単に議席を得られるわけではない。期待が大きい半面、応えられないと、失速も早い。候補者を急に集めると、党の理念や政策が一致しないままで、他の政党との協力関係も築かなければならない。当初は“土台”がもろい。細川政権は発足直後、75・7%の支持率があったのに、8カ月余りの短命だった」
「短期間で解党したり、他の政党と合併したりする例も多い。『選挙目的』とか『有権者不在』と批判されることもある。政党交付金は、1月1日時点で政党要件を満たしていないと受け取れないから、年末になると新党ができることが多く、新党結成は年末の風物詩なんて皮肉られたこともあるんだ」