ファッションブランド「KENZO」の創業者で、世界的デザイナーの高田賢三(たかだ・けんぞう)さんが4日、新型コロナウイルス感染のため、パリ郊外の病院で死去した。81歳。姫路市出身で、故郷への強い愛着で知られた。
高田さんは、長きにわたって世界のファッション界を先導する傍ら、古里・姫路に惜しみなく愛情を注いできた。その突然の訃報に、故郷からも惜しむ声が上がった。
高田さんが故郷に錦を飾ったのは1989年。姫路市制100周年を記念して姫路城三の丸広場で自身初の屋外ショーを開いた。フランス国旗を思わせるドレスや千姫をイメージした純白の花嫁衣装で市民を魅了した。
同じ姫路西高校出身で、ショー当時に市議として打ち合わせに参加した柳谷義則さん(81)は、その後も家族ぐるみで親交を深めた。パリに招かれたこともあり、2人で撮った写真を見ながら、「まだ(高田さんが)生きているつもりでいる」と声を振り絞った。
来年秋、JR姫路駅東側に開館予定の市文化コンベンションセンター。その緞帳(どんちょう)の絵柄を手掛けたのも高田さんだった。依頼した石見利勝元市長(79)は「無理なお願いにも快諾してくださり、古里を思う気持ちを感じた。出来上がりを見ていただけなかったのは本当に残念」と悼んだ。
姫路市内に住む高田さんの弟、山下紀年(のりとし)さん(79)によると、パリで多忙を極めながらも年に1度は帰国し、温泉旅行や食事できょうだいの時間を過ごしたという。「才能は世間の評価が証明してくれた。私にとっては優しくて良いお兄さんでした」(井沢泰斗、地道優樹)