兵庫県の井戸敏三知事は1日、新型コロナウイルス対策本部会議の後に会見し、兵庫への適用が検討される「まん延防止等重点措置」などに対する考えを示した。報道陣との主なやりとりは次の通り。
-変異株の怖さは。
「在院日数が少し長引きつつある。国が十分な知見を持っていないので、変異株についてはPCR検査が仮に陰性になっても人にうつすことはないから転院するというのが、従前のウイルスでは行われていた。今は、2回のPCR検査で陰性にならないと転院するという運用が難しいという実例がある。そうすると長期間在院する方が増えつつある」
-第3波と違い、感染は若者が中心で、福祉施設や病院での大規模なクラスターが確認されていない。
「3波でも家庭でうつされて、無症状で自分で気付かずに職場に持ち込むというケースがかなりクラスターの原因になっているのではないかと申し上げたと思う。これから注意しないとクラスター化することも考えられる。病院や高齢者施設は兆候があればすぐにPCR検査をしてもらう。兆候が出たら直ちに対応するというように注意してほしい。初動をしっかりしてもらうのが重要だと思う。警戒する必要がある」
-大阪府の吉村洋文知事がオリンピックの聖火リレーに言及した。
「もう少し状況を十分に見た上で。今の段階では聖火リレーは(まん延防止等重点措置の期間に当たらない5月中旬を予定する)兵庫県ではきちっと挙行するという状況だが、状況を見極めた上でしっかり判断しなければならない」
-聖火リレーについて、大阪が中止はどうかと発言されたが、受け止めは。
「大阪が判断すること。横から何かコメントすることではないと思う」
-一定の理解は。
「聖火リレー自身、室内ではない。感染防止対策をしっかりした上で行われるのが前提。どういう判断をするかはやはり主催者が決めること」
-まん延防止等重点措置で、神戸と阪神間が対象地域になるとされる。
「1週間前との増加の状況を勘案して阪神間を重点地区にしなければならないかな、と。都市部はやはり、接触の機会が多い。行事が増えている中で、人と人との接触の機会が多く、食事や催しが増えてきている。その実態を表しているのではないか」
-まん延防止等重点措置の対象は4市。効果への期待は。
「現実には4日までは、但馬や西播磨とか淡路、丹波などを除き、営業時間短縮の要請をしていくのが前提。5日からは特に如実な地域を、さらに1時間短縮していただく。それぞれ、みんなで協力して歯止めをかけていくきっかけをつくろうという姿勢でいる。県民の皆さんと事業者の皆さんの協力をよろしくお願いしたい」
-兵庫も大阪も、緊急事態宣言を解除した時に、なんとかリバウンドをしないように呼びかけをした上での急上昇。抑え込めなかったという点について受け止めは。
「ずいぶん、タイミングが早く来てしまったなと。2波と3波の間でも、水準はちょっと高かったが、横ばい期間がかなりあった。私は解除を申請する対応は誤っていなかったと思う。一方で、リバウンドを警戒して呼び掛けたが、年度末の人の動きが予想をはるかに超えて大きくなってしまった。その意味で、もう少し見定めても良いのではという意見がないわけではないが、できるだけ早くまん延防止等重点措置の適用をして、県民に強いメッセージにしたい」
-具体的な対策の内容はいつごろか。
「5日なので、今週の最後には開かざるを得ない。内容はおおむね方向付けを説明した。国と協議した上で適用する」
-まん延防止等重点措置が適用されると、飲食店の時短要請の時間が1時間早くなる。それに伴う協力金の県の負担が増えると思うが、国に対しての働きかけは。
「4万円をベースに、規模別に上積みという国の方針。財源措置は従前と同じように8割が国、2割が地方。2割も臨時交付金等の措置を大部分するというのが骨子なので、従来と同じ対策を取っていただけるように要請していく。それがないとなかなか財政が厳しい。上積みをするという措置が取れるかどうかといういうようなことになる。そこはしっかり要請したい」
-神戸市の病床使用率が高い。変異株だと在院日数が長くなるのが影響していると思うが、在院日数を縮める工夫をする考えは。
「工夫したいが、今、国立の感染症研究所で変異株の患者の症状を経過観察している。その知見から一般的な処方箋を出そうとしている最中。われわれだけでは事例が少ないので一般的な基準を作るのは難しい。できるだけ早く、国で対応の方向性を明確にしていただくように強く要請している。そうでないと、出口が目詰まりする。結果として入り口の重症の患者を引き受けられなくなる。それと合わせて、病院ではなく、例えば宿泊施設などへの転所も積極的に進めていく運用も検討する必要がある」
-先週来、感染が増えてからまん延防止等重点措置については検討を続けていると。必要な時には躊躇なくと打つということだったが、このタイミングで申請を決めた理由、経緯は。
「新規患者の発生数が今週に入って急に増えた。今日も入れた3日間で、平均すると200人を越えている。やはりこれは緊急事態。逡巡するよりは適用を申請した方が後のためにはなるのではないかと思った」
-感染者数を見ると、東播磨も芦屋と比べて10万人当たりの人数が遜色がない。今後の要請地区の拡大に対する考え方は。
「推移によると申し上げた方がいい。とりあえずコアな部分として神戸市と3市。例えば、その周辺ににじみ出し現象で増えてきているというようなことがあれば、対象エリアの拡大も考えられる。拡大は国と相談しなければいけないが、知事が必要があると考えれば拡大できる制度。そのへんは弾力的にしたい」
-まん延防止等重点措置について、宣言と違うところは強制力。従わないところは強制力を発揮するつもりか。
「2日からの実態を見極めた上で検討していく。強制力を発動しなくてもご協力いただけるようにしっかりと協力依頼をさせていただく」
-重症病床が60%を越えている。受け止めと、一般病床を拡大する考えは。
「3波の時の最大確保病床は全部動いていないので、それを目指して拡大を急ぎたい。それと、加古川の重症病棟が4月中旬に動き出す。12日に。それが加わることでかなり緩和されるはず。神戸の逼迫(ひっぱく)度合いがきついので、周辺地区がしっかり応援していくことを含めて、役割分担を徹底したい」
-今回、午後8時と9時でグラデーションが掛かり、県民にとっては分かりにくい。どのように呼び掛けるか。
「4日までは9時で統一されている。5日以降は4市のみ8時、その他は9時。そんなに分かりにくくないと思う。まん延防止等重点措置の対象は8時、そうじゃないところは9時と区分けしながら理解を求めたい」
-緊急事態宣言解除の時期について、誤った判断ではなかったと発言があったが、もう1週間延ばしておけばという考えなのか、適切だったと考えるか。
「2月末頃の時点では順調に減少に転じていた。年度末の活発化とはほど遠い時期だった。解除の申請自体はやむないことで正確だったと思う」
-間もなく加古川の重症病床が稼働し始める。今時点で、12床増えても使用率は57%。高い水準なのは変わらないが、重症病床をもう少し増やさないといけないという印象があるが。
「重症病床は態勢との問題がある。1人の患者に対し、医師2人、看護師が5~6人。24時間態勢なので。簡単に増やせない。現実に。さらに増やす必要があるかはしっかり見極めたい。50%という数字の根拠は、半分くらい余裕を持つという意味。大阪の解除基準は60%。50%前後は一つの目安。逼迫感がない状況を生み出す、そういう運用ができるかどうかで病床数を決めるべきと思う」
-今だと準備がしやすいと思うが。余裕があるうちにという部分もある。
「少なくともまずはピーク時対応を早く実現するということにして対応したい。各医療機関にそのような対応、準備をしっかりいただいているところ」
-まん延防止等重点措置のタイミングについて、3日間平均で200人を超えたというのも大きな要素だと思うが、足並みをそろえるという意味で、大阪の対応も目を離せない部分もあると思う。兵庫県としてはどう見ていた。
「一番の問題は3日間の発症数。もう一つは、大阪が申請されたというのもあって、もし兵庫が手を組まないとなると、その間に大阪から流れてくる。状況が厳しくなると、交流圏なので足並みをそろえるのが基本姿勢。たかだか200が3日間というか、大変な200が3日間というのか、言い方は両サイドある。経済の影響などを考えると疑問がないわけではない。それよりもまずコロナのまんえんを防止するのを優先するべきと対策本部会議では判断した」
-今回の措置にも影響したと思うが、第3波と比べて大阪、兵庫が首都圏に比べても多い。その要因として考えられることは。
「変異株の時間が先行しているのが関西なのかも知れない。関東がこれからなのかも知れない。なんとも評価する材料を持ち合わせていないが、状況を見ていると変異株の従来株に対する置き換えが先行しているというのもあるという気がする」
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