長時間労働の末、うつ病を発症して自殺。なぜ、上司は部下をそこまで追い込んだのか-。息子を亡くした兵庫県内の母親は約6年にわたって企業と対峙(たいじ)してきた。過労死が社会問題になって久しいが、過労死に関する労災申請は増加の一途。取材に応じた母親は「司法が変わり、経営者の刑事責任を問わないと現状を変えられない」と訴える。(中部 剛)
西日本高速道路会社(大阪市)の元社員の男性=当時(34)=が2015年、長時間労働からうつ病を発症し自殺。残業時間は月150時間を超し、神戸西労働基準監督署は労災として認めた。
過労死が起きると、遺族は企業の責任を問い、損害賠償を求めて民事訴訟を起こす例があるが、男性の母親は裁判ではなく、民事調停を選んだ。「加害企業と向き合い、思いを伝えたかった」と振り返る。
調停で求めたものは、西日本高速の再発防止の取り組み、トップによる公的な場での謝罪、そして慰霊碑の設置だった。慰霊碑は母親の強い望みで、元社員が亡くなった社員寮の敷地に建立された。母親は「過労死が繰り返されている。企業も社会も過労死を忘れてはいけない」と、その思いを語った。
■審査会は検察批判
調停の一方で、遺族は業務上過失致死容疑で元上司ら8人を告訴。過労死をめぐる遺族の刑事告訴は異例だった。18年11月に不起訴となったが、神戸第2検察審査会が昨年6月、「対策をとっていれば防ぐことができた」とし、検察の判断に異議を唱えた。
「不起訴不当」とした同審査会の議決は厳しい指摘だった。「検察官が長時間労働の勤務と自殺に因果関係がないというのは納得できない」とし、さらに「措置をとっていれば自死を防ぐことができた。被疑者(元上司)らが業務上過失致死罪の責めを負うことは明らか」と踏み込んだ。
それでも検察は今年3月11日付で2度目の「不起訴」を母親に伝えた。母親の代理人で、過労死問題に詳しい渡部吉泰弁護士は「市民感覚と検察の常識のずれが明らかになった」とし、さらに「客観的な証拠や、医学的知見、社会常識などが考慮されないまま結論が出された」と批判する。検察と向き合った母親も「初めから起訴するつもりはなかったように思えた」と落胆を隠せない。
■労災請求は増加
過労死という言葉が社会的に認知され、使用者の安全配慮義務を問う民事上の判例を重ねてきた。しかし、過労死は一向に減っていない。19年度の「過労死等の労災補償状況」を見ると、精神障害と脳・心臓疾患の請求件数は計2996件に達し、その5年前と比べると、約3割も増加している=グラフ。母親は「過労死が出ても企業は賠償金を払えばいいという感覚があるのではないか。過労死をなくすには、会社を動かす経営層の刑事責任を問わないといけない」と強調する。
経営者が「生産性向上」や「効率化」を掲げ、中間管理職が従業員に無理なノルマを課す構造がはびこる。真面目に働く労働者がなぜ死に追い込まれなければならないのか。母親は労災請求、民事調停、刑事告訴と、6年にわたって問い続けてきたが、矢は尽きた。「いま現場で働いている人が過労死防止に取り組んでほしい、考えてほしい」と静かに語った。
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