新型コロナウイルスの感染が10代以下にも広がる中、兵庫県内でも9月1日にはほとんどの学校で2学期を迎える。学校での感染拡大を懸念する声は根強いが、県教育委員会は「公教育の本質は人格形成。人と交わる中で学ぶ機会を保証したい」と対面授業の重要性を強調。対策を徹底した上で、一斉休校などは実施しない考えだ。
県内で最も早く8月23日に中学校の始業式を行った明石市。同市教委は家族の体調不良でも生徒の登校を控えさせるなど、感染対策を徹底させて授業を続ける。感染不安などを理由に登校できない生徒もいるが、大半は平静に過ごしているという。
同市内にある中学校の校長は「食事中は静かだし、友人同士で手をつなぐ姿も減った。中学生らしさを我慢させているのは申し訳ないが、マスク越しに子どもの表情を見て気持ちに寄り添っている」と話す。
ただ、一斉休校しない方針を発表した斎藤元彦知事のツイッターには「子どもの長距離通学が家庭感染の原因になる」「オンライン授業を併用して」などの書き込みが寄せられるなど、感染拡大を不安視する声は少なくない。文部科学省は27日、感染状況によっては児童生徒2~3人の感染が判明した時点でも、潜伏期間を考慮して、5~7日間を目安に学級閉鎖を検討するよう、各自治体へ通知した。
県教委も、感染拡大の兆候が出れば迅速に授業を止めるとする一方、「学力向上だけならオンラインでもできるが、心の成長には人とのふれあいが必要」と、「顔を合わせる場」の重要性を強調する。
これまでの感染対策にも一定の手応えを示す。デルタ株は感染力が強いとされ、7月以降の「第5波」で、県内では19歳以下の感染者は8月16日までに2116人に上る。だが部活動などでのクラスター(感染者集団)は7件88人にとどまっている。「部室での着替えは人数や時間を制限する」などの対策を徹底しており、家庭で感染した生徒が夏休みの部活動に参加していても、部内で陽性者が出ることはほとんどなかったという。
県教委は「休校して教師の目が行き届かなくなる方が感染拡大の懸念がある」とも指摘。小学4年の長男がいる神戸市の女性(29)は「昨年の一斉休校では親子ともストレスがたまった。子どもは人との関わりがなくなると影響が大きい」と理解を示す。
一方、川西市教委は9月から、対面授業とオンラインの選択制を導入する。同市教委も学びの保証には対面の方が効率的であることを認めるが「これまでの感染対策がデルタ株に通用するか懸念がある。家庭の要望も踏まえ、多様な学び方を提供したい」とする。(古根川淳也、小尾絵生)