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戦場の真実、ロシア人に「気付いて」 兵庫からSNSで伝え続けるウクライナ人

2022/03/15 12:08

 ロシアのウクライナ侵攻で、世界中からウクライナ支援の声が上がる一方、ロシア国内では情報統制の影響もあり、プーチン政権の支持率は高いままだ。両国は言葉や文化も近く「兄弟のよう」と例えられる。ロシア語を話し、ロシア人とビジネスを展開してきた兵庫県内の40代のウクライナ人男性も板挟みになり「ロシア人を非難する気はない。でも、ウクライナで起きている真実を知ってほしい。私たちが攻撃される理由も、彼らが攻撃する理由もない」と唇をかむ。

 ロシアとの貿易業を営み、会員制交流サイト(SNS)ではロシア人とウクライナ人双方のコミュニティーに参加する。政治的な話題は避けてきたが、ロシア人の1人から「軍隊に入った友達が、チェルノブイリ近くでウクライナ軍を全滅させたと言っていた」と伝えられた。

 「『友達が無事で良かったね』と答えることしかできなかったけれど…。彼には私を傷つける意図は一切なく、単に知人同士、近況を語っている感覚」と男性。「私がウクライナ人で今は敵だということを忘れるぐらい、両国の人の距離は近い。なぜ戦っているのか分からない。不思議な戦争です」とうなだれる。

 母や妹は知人を頼り、首都キエフからポーランドへ避難した。だが、キエフに残る知人は出産が近いためシェルターにも逃げられず、夫ともう1人の子と自宅アパートで最も頑丈なバスルームで夜を過ごす。建物にはミサイルが着弾した。SNSで連絡を取るが、毎日恐怖で寝られず、赤ちゃんへの影響も不安だと涙ぐんでいるという。

 ロシア国内では、情報統制が厳しくなり「戦争」と表現するだけで罪に問われる。男性の父は、2014年にロシアが併合したクリミア半島で暮らすが、キエフの自宅近くが爆撃された写真を送っても、まだ侵攻を信じられない様子という。ロシア人の知人も「エアコンが爆発したんじゃないのか」「ウクライナ軍のデマだ」。

 捕虜として映像に出てくるロシア兵は若者ばかりで「プーチン大統領は若年兵を前線に送らないと言ったのに。だまされて連れて行かれ、犠牲になる兵士もいる。彼らやその母親への犯罪だ」と憤る。

 男性はロシア人のSNSコミュニティーで、ウクライナの現状を丁寧に伝える。「何とか気付いてほしい。日本にいる私には、こんなことしかできないから…」と悲しげに笑う。

 そして、不安そうにニュースを見つめる自らの子どもたちには、正反対の主張を繰り広げる双方の報道を見せてこう伝える。

 「ロシア人を責めたり、嫌いになったりしてはいけないよ。本当は素晴らしい国なんだ。でも、決して起きてはいけないことが、たった一人の人間の判断で起きてしまう。この悲劇をしっかり見て、考えてほしい」(広畑千春)

【特集ページ】ウクライナ侵攻

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