海洋冒険家、堀江謙一さん(83)の太平洋単独横断から60年。当時の初代「マーメイド号」を製造した兵庫県姫路市的形町の作業場で、和船が建造されている。今月中にも米国・サンフランシスコを出港する大ベテランに負けじと、歴史を積み重ねた場所で船大工が技術と伝統をつなぐ。
創業1918(大正7)年のヨットビルダー「オクムラボート販売」。競技艇を製造する本工場とは別に、60年前に堀江艇の最終工程を担った木造建屋を旧工場として使う。幅6メートル、奥行き16メートルの建物内で、初代マーメイド号とほぼ同じ全長約6メートルの和船を造る。
主に担当したのは同社の村上学さん(70)と大和田航(わたる)さん(32)。洋船と異なり、板を張り合わせて造る和船は2012年、姫路城の内堀遊覧用の新船建造で初めて手掛け、各地の文化財船体修理も請け負ってきた。今回の船は3月中に完成し、兵庫県外の日本庭園で遊覧船として使用される。
大学時代はヨット部に所属していた大和田さんは、船と建物を見つめ「先人から託された技術を絶やさないようにしたい。それにしても堀江さんは本当にすごい」とうれしそうに話す。(大山伸一郎)