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18、19歳刑罰か更生か 少年法改正で「特定少年」 「成人未満」事件、見直す機会に

2022/03/30 11:30

 4月1日、成人年齢が18歳に引き下げられます。

 これまでの選挙権に加え、民法の規定も変わって18歳以上は「大人」として扱われます。クレジットカードも作れるし、アパートの賃貸契約も親の同意なしでできます。20歳ではなく、18歳が対象の成人式を予定する自治体もあります。成人年齢の見直しは、明治以来で約140年ぶりです。

 でも、同時に改正施行される少年法は「18歳成人」となりませんでした。これまで「少年」だった18、19歳は、「特定少年」という新たな区分でくくられます。少年法適用の対象ですが、成人に準じた対応も一部でできるようになります。

 今年は、くしくも1997年に神戸市須磨区で男子中学生が小学生5人を殺傷し、社会に衝撃を与えた連続児童殺傷事件から25年の節目と重なります。当時14歳だった「少年A」は今夏、40歳になります。

 この事件後、少年法の改正は5度目です。改正のたび、よく「厳罰化」と表現されます。今回も、18、19歳の特定少年は、成人のように刑罰で対処される罪種が増え、起訴されると実名報道が可能になる点が注目されています。

 ただ、少年事件そのものは年々減っています=グラフ参照。少年法の適用年齢をめぐり、3年半に及んだ専門家らの審議も曲折を経ました。少年法も「成人年齢18歳」で議論が始まり、反対の声が押し戻し、いわば折衷案で決着しました。

 法律論は、抽象的で難しいものです。改正少年法の施行を前に、私たちはさまざまな立場の人に意見を聞きました。「成人になる権利に、義務が伴うのは当然だ」と検察関係者は語りました。ある犯罪被害者の遺族は「厳罰化ではなく適正化」と言います。これに対し、事件に関わった少年の立ち直りに力を注ぐ弁護士は「いや刑罰化の表現が正しい」と説きます。

 「罪を憎んで人を憎まず」の言葉のように、少年法は、未成年の立ち直りを大事にします。「少年法は人を見る。刑法は行為を見る」という考え方もあります。18、19歳の特定少年に、更生を求めるのか、刑罰を科すのか。改正法は問いかけてきます。どちらに軸足を置くべきなのか、と。

 少年事件全体のうち、殺人罪のような重大事件はほんの一部です。しかし、20歳未満が容疑者、被告となった、それらの事件こそが広く世に報じられ、社会や法律を変えてきたのも事実です。私たちは、1997年の神戸連続児童殺傷事件、99年の山口県光市の母子殺害事件、2010年に起きた神戸市北区の高2刺殺事件から取材を進めました。

 命を奪ったとされる3人の元少年は、事件当時の年齢によって、全く異なる人生をたどっていました。連続児童殺傷事件で14歳だった元少年は社会に戻り、遺族に反省の手紙を送りましたが、手記の出版を機に消息を絶ち、「匿名の森」に消えました。光市の18歳だった元少年は、死刑が確定して実名が報道され、社会から遮断された拘置所にいます。神戸市北区の事件では、発生当時17歳、逮捕時28歳の男が今年1月、殺人罪で起訴されました。

 少年法を再考する連載は、この3人が関わった事件から始めます。法改正に賛成か反対かではなく、少年事件を立ち止まり見直す機会にしたいと思います。

 想像してみてください。もし、あなたの家族が少年事件の被害者になってしまったら。万が一、自分の子や孫が加害者になってしまうとしたら。18歳は、大人か子どもか。「成人未満」の犯罪について考えます。(霍見真一郎)

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